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【ホンダ フィット 新型試乗】「クロスター」はちょっとしたブームになる気配…九島辰也

自動車試乗記

ホンダ フィット 新型(クロスター)全 12 枚写真をすべて見る

新型『フィット』は見るからにヨーロピアンテイストが強い。フロントピラーから描かれるルーフライン、そしてリアエンドまでのフォルムはどこかフランス車風。先代からの流れを感じなくもないが、ヘッドライトの造形が変わったことを含め、そんな印象となった。

秀逸なのはそのフロントピラー。2本に分け、1つを極端に細くすることで死角が削られている。実際に交差点でよく見えていることを実感した。

2つくらい上のクラスを感じる上品さ


さて、最初に乗ったのは1.5リットルガソリンエンジン+電気モーターのe:HEVの「リュクス」、FWDである。ガソリンエンジンが充電に積極的に使われるため、かなりの領域でEV走行ができる。タイヤを動かすのはほぼモーターと考えていい。走行中アクセルを踏み直してもそのままEVモードをキープし続けられるのがすごい。

気になる乗り心地は、想像以上に快適に仕上がっている。試乗前それほど期待していなかった分、そこは評価できる。ピッチングはほとんど感じられないし、バウンシングもいつまでもクルマが揺すられることはない。特に気に入ったのは縮み側のサスペンションの設定。ダンパーの戻り時に衝撃が少なく乗員に優しい。2つくらい上のクラスを感じる上品さがある。

そしてそのキャビンはことのほか静か。エンジンのオンオフも簡単にわかるくらいである。そのため逆にCVTのネガティブ要素が浮き上がる。高速道路走行中エンジンでタイヤを駆動させる場面があったが、CVTによってエンジンが唸る場面も多々あった。まぁ、それほどアグレッシブに走らなければ気にならないのだが、『N-WGN』のCVTのセッティングがかなりいいことを鑑みると、もう少し精緻な制御が欲しい気がする。

運転視界もデザインも良好


運転中の視界は良好。前述したフロントピラーの効果がある他、低いダッシュパネルが生み出す上下の幅もあってものすごくいい。実用性は高そうだ。それでいて外から見て極端にフロントガラスが上下に伸びているわけではないのがデザインの妙。この辺は相当細かにパッケージングを煮詰めた結果だろう。

この他で気付いたのは、走り出しの時シフトレバーをパーキングポジションから“Dレンジ”に動かすのがそのまま一番下の“Bレンジ”までいってしまうところ。そこはひとつゲートが必要だろう。“Bレンジ”のまま走ってしまうと回生ブレーキの強さで同乗者が車酔いしてしまうかもしれない。それに「思ったより燃費悪いなー!」なんてことにもなりかねない。

一番の驚きは、「クロスター」の快適性

それはともかく、総合的に走りは軽快で楽しい仕上がりになっている。1.3リットルガソリンエンジン、FWDの「ホーム」も乗ったが、どちらかが極端に乗り心地が悪かったり、走りが鈍重になったりすることはない。それより何より驚いたのは、「クロスター」の乗り心地の良さ。

アウトドアを意識したこのモデルは最低地上高を20mm高くしているのにも関わらず乗り心地がいい。通常この手のバリエーションモデルは足のセッティングが合わず、乗り心地が極端に悪くなるパターンが多い。が、「クロスター」は通常のフィット同等もしくはそれ以上に快適であった。

みんながその辺に気づくと、このクルマはちょっとしたブームになりそうな気配もする。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

《text:九島辰也》

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