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ベストセラー“DSP”の上級機が新登場! 『HELIX DSP ULTRA』を聴く!!

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ハイエンドカーオーディオ愛好家からの絶大な支持を集めているベストセラー“DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)”、『HELIX DSP PRO MKll』。その上位機種となる『HELIX DSP ULTRA』のデリバリーが、今月初旬より開始されている。

この話題のユニットの実力を確かめる機会に恵まれた。さて、当機の進化ポイントや特長、そしてポテンシャルは…。それらをじっくりとリポートする。

『HELIX DSP PRO MKll』との最大の違いは、“音質性能”にアリ!

昨年春にオーストリア・ザルツブルグにて開催された『EMMA(エマ)』の“AUDIOTEC FISCHER GmbH”のブースにて、その試作機の基板が展示され開発中であることが明らかになっていた『HELIX DSP ULTRA』。以来、世界中のマニアから登場が待たれていた当機が、遂に姿を現した。

ところで当機のことを、『HELIX DSP PRO MKll』の次世代機だと思っている方も少なくないかもしれないが、実はそうではない。先述したとおり当機は、その“上位機種”という位置付けだ。つまり、名機『HELIX DSP PRO MKll』はラインナップから外れない。“ヘリックス”の単体“DSP”の布陣が一層分厚くなった、というわけなのだ。ちなみに2機種間の価格差は7万円だ(『HELIX DSP PRO MKll』の税抜価格は16万円、『HELIX DSP ULTRA』のそれは23万円)。

この価格差に見合う実力差は、あるのか、ないのか…。

最初に、『HELIX DSP ULTRA』と『HELIX DSP PRO MKll』との相違点を整理してお伝えしていこう。

最大の違いはズバリ、「音質性能」にある。「A/Dコンバーター」並びに「D/Aコンバーター」にはAKM社製の最新ハイグレードモデルが採用され、さらにはコンデンサーやオペアンプ等々、音響パーツのチョイスが一層厳選されている。結果、サウンドクオリティがさらに磨き込まれている、とのことなのだ。

ただし、数字的な違いはわずかだ。『HELIX DSP ULTRA』の主なスペックを見ると、「周波数特性」が10~44kHz、「高調波歪率」が0.0004%以下、「SN比」が117dB以上(デジタル入力時)と記されている。これらはどれも目を見張る値ではあるものの、『HELIX DSP PRO MKll』との差は僅少だ。「周波数特性」は同一で、「高調波歪率」は0.0001%、「SN比」は1dB高められているに過ぎない。この少しの差が、実際の音にどれだけ表れているのかと言うと…。その答は、当記事の最後にお伝えする。

“DSPチップ”が倍増され、さらにはコプロセッサーも組み入れられ、さまざまな処理速度と精度が向上!

なおパーツ構成的には、さらに大きな相違点がある。それは、「“DSPチップ”が倍増されている」ところ。『HELIX DSP PRO MKll』では295MHzのクロックで駆動する64bitプロセッサーの搭載数は「1基」だが、『HELIX DSP ULTRA』ではそれが「2基」となっていて、さらには32bitのコプロセッサーも新採用されている。

結果、サウンド制御の処理スピードが速められ、精度も高められている。さらには使い勝手も向上している。例えばメモリー切り替えの速度やハイレベル入力のサミング処理速度が速められ、かつサミング操作の合理化も図られた。

コプロセッサーがあることで、別売の『ユニバーサルWi-Fiインターフェース』(税抜価格:2万5000円)の使用も可能となっている。これをアドオンすると、別売の『ディレクター』(税抜価格:4万円)で行えていたことがスマホで実行できるようになり、さらにはパソコンでのチューニング操作をワイヤレスで行える(『ディレクター』と『ユニバーサルWi-Fiインターフェース』との併用は不可)。

また、コントロールできるch数が増えたことも進化ポイントだ。『HELIX DSP PRO MKll』では10chだが、『HELIX DSP ULTRA』では12chに増えた。リアスピーカーが2ウェイになっていたりセンタースピーカーが装着されていたりする複雑なスピーカーレイアウトのクルマにも、『HELIX DSP ULTRA』は高い適合性を発揮する。

音質性能の違いは明らか。ワングレード上のHI-FIサウンドを堪能!

かくして、ここからはいよいよ試聴リポートをお伝えしていく。「最大の進化点」とされている“音質性能”の違いを、同一条件で聴き比べ、確認した。

テストは“ヘリックス”のディストリビューターである“エムズライン”の試聴室にて行った。DAPをソースユニットとして使用し、パワーアンプには“ブラックス”の『GX-2400 Graphic LongVersion』(税抜価格:39万円)を使った。そしてリファレンススピーカーとして、同じく“ブラックス”の『Graphic GLシリーズ』の2ウェイシステムを用いた(税抜価格:20万円)。

まずは『HELIX DSP PRO MKll』の音から確認した。さすがはベストセラーモデル。その音はピュアで密度が濃い。特に、低音の野太さが印象的だった。この点についてはスピーカーの特長が表れているのだろうか。力強く、そして厚みのある低音が楽しめた。その上で中域も高域もリアルで緻密。ひとしきりグッドサウンドを堪能した。

そしていよいよプロセッサーを『HELIX DSP ULTRA』へと換装し、同様のテストトラックを流し始めると…。

一瞬の出音で、音質がワンランク上であることを感じ取れた。2機は確かに別グレードの製品だ。厚みのあった低音が一層引き締まり、そして全体的にはスッキリ感が増している。各楽器の音の分離感も一層高まり、ステージの見通しも良化している。スペックの違いは、数字以上に音にしっかりと表れていた。

情報量も増している。音数が増え、より緻密で滑らかに、そしてさらに濃厚になっている。結果、音楽性も高まった。抑揚感が増し、1フレーズごとの説得力が上がっている。ゆえにぐいぐいと楽曲の世界に引き込まれていく。

もしも2機種を聴き比べる機会に恵まれたら、ぜひとも音の違いを体感してほしい。もしも新たな“DSP”を探しているハイエンドユーザーがこれらの音を聴き比べたら、7万円のコストアップがいとわれることは少ないに違いない。また、『HELIX DSP PRO MKll』ユーザーがこの音を確認したら、少なからず買い替えたい衝動が沸き上がるだろう。そう思わせるほど、『HELIX DSP ULTRA』の音は魅力的だった。

『HELIX DSP ULTRA』のポテンシャルの高さを疑う余地はない。ヒットの予感は、大だ。

《text:太田祥三》

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