カーオーディオでは、サブウーファーが存在感を発揮する。ドアに取り付けられるスピーカーにはサイズ的な制約により重低音の再生能力に限界がある。それを補うためのツールが必要で、それがサブウーファーというわけなのだ。
当特集では、これを使いこなすためノウハウを紹介している。今回は、「サブウーファーを鳴らすためのパワーアンプ選びとその使い方」をテーマに話を進めていく。
なお今回も、有名カーオーディオ・プロショップに協力を仰いだ。岩手県の実力店、“サウンドフリークス”の佐藤代表に参考になる話をたっぷり訊いた。じっくりお読みいただきたい。
サブウーファーとの“パワーバランス”を取ることが大事!
さて、ユニットサブウーファーを鳴らそうとするときには必ずパワーアンプが必要となる。その選択の仕方を、佐藤さんに詳しく教えてもらった。
「選択肢はさまざまあります。AB級もしくはD級のフルレンジの2chアンプや4chアンプを使っても良いですし、サブウーファー用のモノラルパワーアンプもたくさん出ています。フロントスピーカー用のパワーアンプを選ぶときよりも、幅広いモデルの中から選べます。
正直、何を選んでも良いと思います。いろいろな観点がありますし。ただ1点、サブウーファーユニットとのパワーバランスは考えたいですが、そこさえクリアできていれば、あとは自由だと思います。
ちなみに最近は、どちらかと言えば小さめのボックスが向いたサブウーファーが増えています。しかし小さなボックスで鳴らすとなるとエアサスペンションが一層効いてきますので、鳴らし切るためにはパワーをかけたい。そういう傾向もありますので、パワーのあるアンプを選んだ方が安心感が高いと思います。使用するサブウーファーユニットよりも1ランク上の出力が確保されたものを選んでおけば、大丈夫でしょうね。
それ以外の細かなところは、気にしすぎない方が良いのではないでしょうか。そもそも選択肢が広いこともあり、悩み始めると決められなくなってしまいますし。
例えば、取り付け上のことを優先させても良いと思います。取り付けスペースを取りたくないときには、小型で高効率なD級2chモデルも候補になります。システムを1台のアンプでまかないたいと考えるなら、フロントスピーカーとの相性を優先させて4chモデルの中から選んでも良いですし。または、低音が効いている音楽がお好きならパワーにこだわったり。ブランドイメージで決めるのもアリだと思います」
フロントスピーカーとの繋がりをシビアに追い込もうとするときには…。
さらに話を続けてもらった。
「予算的にも無理をする必要はないと思います。サウンドコンテストに挑戦されるようなクルマであっても、お手軽なパワーアンプをお薦めすることも少なくないです。なぜなら、サブウーファー用のパワーアンプ選びにこだわる前に、やれることがさまざまあるからです。
やはり優先させるべきは、“フロントスピーカーで鳴らすサウンドの完成度を上げること”だと思います。予算的にもそちらに重きを置きたいですよね。
なおサブウーファーの鳴り方は、パワーアンプ以外の部分でもいろいろ変えられます。例えば、サブウーファーボックスを設置する位置でも変化しますし。5cm変えただけでフロントスピーカーとの繋がりが良くなったり。向きを変えても変わります。もちろんサウンドチューニングのやり方でも変化します。その意味でも、パワーアンプ選びに悩み過ぎる必要はないと思うんです。
ただし、フロントスピーカーで作る音の完成度が上がってくると、サブウーファー用のパワーアンプ選びもシビアになってきますね。問題となるのは、フロントスピーカーとの繋がりです。
そうなったときには、“フロントスピーカー用のパワーアンプと同じものを使う”というのが、1つのセオリーになると思います。フロントスピーカー用のパワーアンプと異なるメーカーのモデルを使うと、回路やゲインの特性等々も違ってきますので、微妙なところで繋げにくくなりがちなんです。
とはいえ、それが絶対的な公式かというと、実はそうでもないんですよね。サウンドコンテストでも、サブウーファー用のパワーアンプには手軽なモデルが使われたクルマが勝ったりもしますから。
“サブウーファーをどう鳴らすか”という問題は、実はとても奥深い。突き詰めていくほどに、皆さん悩まれます。そのように悩むのもまた、楽しいわけですけれど。そこを楽しみ尽くすのも良いですし、気楽に選んでも良いですし。いろいろな楽しみ方ができると思います」
サブウーファー用パワーアンプに向いた“電源強化策”とは?
続いては、使い方について教えてもらった。パワーアンプをシステムに組み入れるとき、とかく問題となるのは“電源”だ。サブウーファー用のパワーアンプの使用におけるお薦めの“電源強化策”を訊いてみた。
「サブウーファー用のパワーアンプだけに特別なことをする必要は無いと思います。システム全体のことを考えたいです。メインユニット、プロセッサー、そしてフロント用のパワーアンプ、すべてを同様にケアしたいですね。
ちなみに私は、“マイナス側”の処理がカギになると考えています。マイナスの配線は普通はボディアースするわけですが、ノイズが出ないアースポイントをいろいろとテストすると、結局のところバッテリーに直接戻すのがベスト、という結果になることが多いんですよ。また最近は、アースが落ちにくい車種も増えている印象もありますし。
なので当店では、“電源強化”をシビアに行おうとするときにはまず、プラス側もマイナス側もメインバッテリーから直接配線するようにしています。1本のケーブルでバッテリーから引き込み、ディストリビューションブロックを設けてそこから各機に配線を分岐させます。キャパシター等の電源強化アイテムを使う場合には、システム全体に効くように設置します。
あとは、パワーケーブルのチョイスも重要だと思います。サブウーファーの場合は特に、スピーカーケーブルに気を使うよりはパワーケーブルに予算を注いだ方が得られる効果は大きいと思います。
“電源強化”についてもいろいろな考え方があります。ショップと相談されながら、より良い形を見つけていただきたいですね」
興味深い話がいろいろと訊けた。佐藤さんの話を参考にしながら、サブウーファー用のパワーアンプ選びと使いこなし方研究を、楽しみながら行おう。楽しむべき要素が、さまざまありそうだ。
《text:太田祥三》