軽量スポーツと錯覚するほど軽い身のこなし
新型トヨタ『スープラ』の出来栄えは素晴らしく、そんな期待を裏切らなかった。車両前部が重い6気筒エンジン搭載車は物理特性として曲がり始めが苦手だが、新型スープラはタイトでツイスティな峠道を走ってもそんなことを感じさないほどシャープに切り込み、軽量スポーツカーかと錯覚するほど軽い身のこなしが印象的だ。
もちろん「危険な香りがするくらい」といっても、香りがするだけであって、実際にはオーバースピードに気を付け、スタビリティコントロールを作動させている限り危険な目にあうことはない。
絶対的な速さと官能性の「6気筒」
340ps(チーフエンジニアの多田氏いわく「カタログ値は340psだが実力はさらに高い」)を発生するBMW謹製3.0リットルターボの速さはさすが。それに加えてアクセルを踏み込むほどパワーが湧きだしてくるような躍動感と高回転パンチ力、そして吹け上がりの気持よさがなんとも刺激的。加えて響き渡るエンジン音も爽快だ。アクセルオフ時に「バババッ!」と発生する排気系の爆発音も楽しすぎる。
ひときわ鋭く軽快な「4気筒」
4気筒エンジンには「SZ-R」に搭載する258ps版と「SZ」に搭載する197ps版があるが、どちらも峠道でパワー不足を感じるようなことはない。乗り比べれば速さの違いがわかるが、それよりも「SZ-R」のほうが高回転でのパンチがあることでいっそう走りを楽しくしていると感じた。そのうえ、マフラーから発する音の演出も「SZ-R」のほうが迫力と遊び心がある。
最後に走りとは全く関係ない話だが、公道で試乗したスープラは乗り心地が良好なことに驚いた。これは想像していなかった美点だった。
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
工藤貴宏|モータージャーナリスト
小学校高学年から自動車雑誌を読みはじめ、1日でも早く運転したくて18歳誕生日の翌日には仮免許を取得したクルマ好き。大学在学中から自動車雑誌でアルバイトを始め、自動車専門誌編集部在籍後、編集プロダクションを経てフリーランスライターに。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。愛車はフランス製ホットハッチと、ディーゼルエンジンを積んだSUV。
《text:工藤貴宏》