アクセスランキング

【三菱 デリカD:5 新型試乗】ライバル不在、唯一無二の存在…中村孝仁

自動車試乗記

三菱 デリカD:5 新型全 20 枚写真をすべて見る

ミニバンなのか?それともSUVなのか

メーカーの人に、「このクルマのライバル、あるいは仮想敵は何ですか?」と尋ねたら、「基本的にライバルはいないと考えています」との返事が返ってきた。果たしてこのクルマはミニバンなのか?それともSUVなのか。

とにかくまず最低地上高が185mmもある。一般的なミニバンと比べて25~30mmは高い。おかげで乗降には足元を確認しないとならない。勿論駆動方式は4WDしか設定がない、という二つの理由だけでも、これはミニバン風な形はしているけど、ただのミニバンじゃないな、ということが良く分かると思う。でも室内は3列シートが用意され、そのレイアウトはまさにミニバンだ。

今回大幅な変更を受けたのはディーゼルエンジン搭載車だけで、ガソリン仕様は旧型スタイルのまま継続販売されるという。またディーゼルには新たに「アーバンギア」という設定も追加されたが、今回試乗したのは従来からのデリカD:5である。

それにしてもフロントマスクは近年の日本車のトレンドになりつつある「どや顔」デザイン。ある人は「ああ、シェーバーみたいな顔したやつね」と表現したが、まさに言い得て妙だった。ヘッドライトをブーメラン上の枠で囲う独特のデザインは、三菱がダイナミックシールドと名付け、現在のトレンドとしているデザイン。それを極限までビッグマウスにして作り上げたのが今回のデリカD5のデザインだ。眉をしかめる人もいるが、この「どや顔」デザインは今確実に日本人の心をとらえているようだから、こちらになびいて当然。まあ現物は写真で見るよりも遥かに納得するから不思議である。

激変したディーゼルエンジン

今回のビッグマイナーチェンジの肝はエンジンと8速ATの導入、それにフロントエンドの改変である。で、そのエンジン。実は4N14と呼ばれる従来からのものを踏襲しながら大幅なフリクション低減や排ガスの低減を行ったものだ。

しかしはっきり言う。この4N14が初搭載された当時、このエンジンにはダメ出しをした。とにかく音はうるさいし、回転フィールは良くないし、パワーもあまり出ている印象がなく、一言で言って旧来のディーゼルそのものだった。ところがどうだ。今回のものは数値よりも遥かにパワフルに感じるし、回転フィールは滑らかだし、静粛性が格段に向上した。これで何故昔の4N14というコードをそのまま引き継ぐのかさっぱりわからないほどに激変している。

2.2リットルのキャパシティーを持ちながら、145ps、380Nmのパフォーマンスは、試乗前にはこれでいいの?という印象を持っていたが、実際に乗ってみると数値以上の力強さを感じ、これで十分と思えた。ただし、思いっきり回そうとするとざらついた印象が顔を出すので、アクセルの踏み方はジワっと…がイイ。

この滑らかなフィーリングを実現している縁の下の力持ちが新たな8速ATの存在だ。メーカーの方は言いたがらないが、それがアイシン製であることは明々白々。とにかく変速ショックの少ないことでは定評のあるトランスミッションだけに、低速トルクの強いディーゼルと相まって、滑るように走る。

唯一無二の存在

骨格に関してはフロントをいじっただけで変えていないというが、「ライバルではない」ミニバンのそれと比べるとはるかに剛性感があって、その点ではSUVの骨格を連想させる。この感覚は、乗っている人に明らかな安心感を与えるのではないかと感じる。

地上高があって車高も高いクルマだから、当然それなりのロールを伴うコーナリング姿勢だが、安定感は十分。それにステアリングフィールがイイ。今回はデュアルピニオン式という凝った電動パワーステアリングを採用し、そのスムーズネスを引き上げたそうだが、その効果は顕著に感じられる。

内装もかなり上質だ。手に触れるところの感触はとても良いし、見た目にも高品質な印象に溢れる。木目はフェイクだが、質感は高い。それにディーラーオプションではあるが10.1インチの巨大なナビディスプレイも優れモノである。

マツダはミニバンを捨て3列シートのSUVを作った。三菱は形こそミニバンだが、SUVの走りを可能にしたSUV風ミニバンを作った。だからこれは唯一無二の存在。誰も他車と比較してこのクルマを買おうとは思わないだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《text:中村 孝仁》

編集部ピックアップ

TOP