現代ハイエンドカーオーディオでは、“サウンド調整機能”が大活躍している。その成り立ちや扱い方を紹介していこうと試みている当コーナー。まずは、“調整”が必要となる理由から解説している。今回は「車内においてのステレオ再生の問題点」について考えていく。
さて前回は、ステレオの仕組みを解説した。おさらいすると、「音楽を両耳で聴いているかのように2本のマイクで録音し、それを左右2本のスピーカーで再生することであたかも録音現場にいるかのような状況を擬似的に作り出そうとする」のが、ざっくりとしたステレオの仕組みであったのだが…。
しかし、クルマの中ではこの仕組みが機能し難い状況となっている。なぜならば、「リスニングポジション」が左右のどちらかに片寄っているから」だ。
リスニングポジションが左右のどちらかに片寄ってしまっては、左右のスピーカーの音量バランスが崩れ、音の到達タイミングがズレてしまう。これではステレオの仕組みが機能せず、音楽を立体的に感じ取り難くなる、というわけなのだ。
さらに言うと、フロントスピーカーがセパレーとタイプだった場合には、右ch、左chそれぞれでのツィーターとミッドウーファーとのサウンドバランスも微妙に狂ってくる。
しかし、“サウンド調整機能”を駆使すると、崩れてしまったサウンドバランスを修正することが可能となる。
なお、音の到達タイミングのズレを解決可能とする“サウンド調整機能”とは、“タイムアライメント”だ。当機能を活用すると、それぞれのスピーカーユニットの、発音タイミングをコントロールできるようになる。近くにあるスピーカーに対しては発音タイミングを遅らせて、あたかもすべてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況を作り出せるようになる。
しかしながら、当機能にも少々限界があったりもする…。
それについては次回に解説させていただこうと思う。次週の当コーナーもお読み逃しのなきように。
《text:太田祥三》