日本各地を転戦する国内最大級のオーディオカーイベント『ACG2018』で今、『ESQL』なる競技が盛り上がりを見せている。これは一体何なのか、そして当競技が盛り上がっている理由はどこにあるのかを緊急リポートしている。
今回はその<後編>として、競技内容や見どころをじっくりと解説していく。
◆現在はノーカテゴリーで実施されているが、国際ルール上ではクラス分けがある!
早速本題に入りたい。まずは審査内容ついて解説していく。なお前回に解説したとおり、『ESQL』は『EMAA(エマ)』の中の1競技であり、日本において『EMMA』は『JCACA(一般社団法人日本カーオーディオ競技協会)』によって主催されているのだが、その『JCACA』 のホームページを見ると、『EMMA』各クラスのスコアシートが掲載されている。その中に『ESQL』のスコアシートも掲載されているので、その中身を紹介しながら審査内容を解説していこうと思う。
さて、スコアシートにはまずはエントラントの名前や車種名等々を書く欄があり、その下に、「カテゴリー」と記された箇所がある。
そこを見ると、“リミテッド”と“アンリミテッド”の2つのカテゴリーが記載されているが、現状『ACG2018』内で行われている『ESQL』は“エキシビション”として行われているので、今の所はノーカテゴリーで実施されている。
ちなみに、国際ルールでは実は、ある程度細かくクラス分けがされているとのことだ。サブウーファーの数やユニット金額、さらにはラゲッジに“壁”を組んであると出られないクラスなどもあるという。
というわけで、『ESQL』が日本でさらに盛り上がり競技者人口が拡大した場合には、「カテゴリー」分けが適用される可能性はある。そうなると一層見どころが増えそうだ。さらなる盛り上がりにも期待しよう。
◆来シーズン以降は「インストール」に関した項目も審査される可能性アリ!?
そしてスコアシートには、審査項目が列挙されている。上から見ていくと、「測定」、「プレゼンテーション」、「ヒューズとケーブル」、「インストレーション」、「クラフトマンシップ」と続いている。そして一番下には「リスニングの満足感」という項目も記されているのだが、これら計6項目については現在、審査は行われていない。
今年の『ACG2018』でジャッジされているのは、それ以外の「音色の正確性」と「スペクトルバランス」、この2項目だ。
ちなみに、今除外されている各項目についても、それぞれ具体的には何が審査されるのかを解説しておこう。もしも正式競技となればこれらも審査される可能性が出てくるので、これからクルマを『ESQL』仕様にしていこうと思っているのなら、これらについても知っておく必要がある。
まず「ヒューズとケーブル」では、メインヒューズ、コンポーネントのヒューズ、電源ケーブルへのヒューズ、それぞれの有る無し、適切性が審査される。そして、「インストレーション」ではユニット取り付けの確実性や、車両としての通常使用ができるか否か、さらには視界が確保されているかも審査される。
そしてその上で「クラフトマンシップ」も審査される。この項目では主に、“見映え”が審査されることとなる。さらには当日のギャラリーへの「プレゼンテーション」も加点対象となる。
ただし、配点が大きいのは「ヒューズとケーブル」、そして「インストレーション」この2つだ。『EMMA』では“安全性”が重視されていて、その部分について手を抜いてしまうと好成績が望めない。覚えておこう。
◆サウンド審査は“オフィシャルCD”の指定トラックでジャッジ!
続いて、今エキシビションで審査されている「音色の正確性」と「スペクトルバランス」、この2項目の審査内容を解説していこう。なおこれらは、『EMMA』の“オフィシャルCD”に収録されているトラックを用いて審査される。
まずは「音色の正確性」から。当項目は、“サブベース”、“ミッドベース”、“ミッドレンジ”、“高域”と、帯域別にジャッジされる。それぞれの配点は30点。合計すると120点。もしもインストールに関することが審査されるようになったとしても、もっとも配点が高いのは当項目、という形となっている。
なお“サブベース”に関しては、審査が2とおり行われる。1つは他の帯域の審査と同様に“オフィシャルCD”の“トラック6”が用いられ「音色の正確性」が審査され(配点15点)、さらには、100Hz以下の5つの帯域について、それぞれの音がしっかりと再生できているかもジャッジされる。
こちらの審査には、“オフィシャルCD”の“トラック7”が使われる。このトラックには、審査対象となる帯域の信号が個別に収録されているので、それぞれがしっかり聴こえるかどうかがはっきりわかる、という仕組みとなっている。
そして「スペクトルバランス」では全体的な音色の正確性や帯域バランス、ステージング等々、クルマの中で音質が審査されるのと同じようなことがジャッジされる。なお当審査には“オフィシャルCD”の“トラック8”が使われる。
◆ジャッジの審査位置はエントラントが指定できる。戦略が吉と出るか凶と出るかに要注目!
最後に、観戦時の見どころを解説していこう。
まず注目すべきなのは、「ジャッジが立つ位置をエントラントが決められる」というところ。ルールでは5m~15mの範囲で設定できるようになっている。近い方がまとまり良く聴こえる可能性は高く、システムに掛かる負荷も小さくてすむ。しかし音圧に自信があったり低音の鳴りっぷりの良いクルマの場合、敢えて距離を取ってダイナミックに聴かせることが優先されたりもしている。各車がどのような戦略を取るのか、まずはここに注目しよう。
ちなみに、よりパワフルに鳴らそうとすると、ドアやラゲッジがビビってくる可能性も出てくる。そうなってしまうとむしろ減点されることとなる。距離を取ろうとするエントラントがいたら、そのチャレンジ精神が吉と出るか凶と出るか、固唾を呑んで見守ろう。
なお、観戦時にはジャッジのすぐ後ろが特等席となる。その場所では、エントラントのクルマが発するサウンドを審査しているすぐそばで聴けるので、各車のサウンドクオリティの違いを感じ取りやすい。お薦めだ。
また、“オフィシャルCD”を購入してみても面白い。審査トラックを自分のクルマやカーオーディオプロショップの試聴ボード等で聴いてみて、正しくはどう聴こえるのかを知っておくと、各車の音の違いがさらに分かりやすくなるはずだ。
なお“オフィシャルCD”には、サウンドチューニングを行う際に便利に使えるトラックも満載されている。ご興味があれば、お近くのカーオーディオプロショップ、または『ACG2018』を主催している「イース・コーポレーション」までお問い合わせを。
さて、『ACG2018』は、11月25日に東京・お台場で開催される『WORLD FINAL』の1戦を残すのみ。なので『ESQL』を観戦できるチャンスは、今年はこれが最後となる。『ESQL』がどのような競技なのか気になっている方や、来シーズンには挑戦してみたいと思っている方は、ぜひぜひ『ACG2018 WORLD FINAL』の会場まで足を運んでみよう。この新たなコンペティションの面白さを、ご体感あれ♪
《text:太田祥三》