試乗車はヴァリアントのTDIモデル。セダンに対し車重は+50kg、オプションの電動パノラマスライディングルーフを装着した個体で1630kg(前930kg/後700kg)の車重。これはガソリンの2.0TSI R-Lineと較べると+50kgというところ。
なぜ車重の記述から始めたかというと、走りの印象は実に軽快だったからだ。新搭載された2リットルターボは190ps/40.8kgmのスペックでパワフルであることは確か。けれど好印象だったのは出足から実にスムースなことで、微妙なアクセルワークにもキチンと反応しながら、しっかりと、スムースにクルマを前に出してくれる。
カタログにも“可動式ガイドべーン付きターボチャージャー”の説明があるが、その効果が十分に発揮されてのことだろう。ドスン!と前に出ることなく、ジワリと動き出してくれる様はストレスがない。
もちろん走り出してからも、言葉で表わせば“軽やか”な走りっぷり。車内に伝わるディーゼルの音、振動は軽微で、まったく気にならない。必要に応じてアクセルを踏み込めば、軽やかなままスピードを乗せる。
ヒタッとした、ゆったりとしなやかな乗り味もパワーフィールにマッチしたもの。ステアリングは穏やかな操舵フィールを確保している。これらは『パサート』の素性そのままで、同乗者も含め、さり気ないが上質な走りっぷりに浸れる…という訳だ。
『アルテオン』の少しトガったキャラクターも新鮮ではあるが、『パサート』の魅力の、気取らず上質な快適性は、ディーゼルを搭載してもなお、まったく変わらない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
《text:島崎七生人》