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【VW e-ゴルフ 試乗】リーフとの価格差をはねのける魅力はあるか…丸山誠

自動車試乗記

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プロトタイプの電気自動車「ブルーeモーション」の試乗から年月が過ぎ、ようやく市販されるEVの『e-ゴルフ』に試乗することができた。

プロトタイプを発表した頃は、VWだけでなく欧州メーカーは電動化に消極的だった。だが時代の流れは早く、現在は各メーカーが電動化に向けて加速している。

VWもEVのe-ゴルフだけでなく、同時にプラグインハイブリッド『ゴルフGTE』も発表している。ハイブリッドはガス欠ならぬ“電欠”の心配がないが、やはりEVは航続距離に注目が集まる。e-ゴルフは一充電走行距離がJC08モード燃費で301km。

日産『リーフ』は同モードで400kmを実現していることを考えると、航続距離が短く感じる。これはバッテリー容量の違いによるもので、e-ゴルフの35.8kWhに対しリーフは40kWhと容量が大きい。e-ゴルフはベース車のフロアとセンタートンネルにぎっしりとバッテリーを搭載しているところを見ると、現在のリチウムイオンタイプではこの容量が限界なのかもしれない。

e-ゴルフのもう一つの注目点がチャデモ規格の急速充電に対応したことだ。一充電走行距離は301kmだが、高速道路ならPAやSAに設置されている高速充電器で充電すればロングドライブが可能。もちろんAC200Vの3kW普通充電にも対応していて約12時間で満充電できる。6kWhにも対応済みで、こちらなら約6時間で充電が完了する。

スタートボタンを押して走行可能状態にすると意外なほど室内が静かだ。エアコンを切った状態でもインバーターなどの電気関係のノイズが小さいことが印象的。ノーマルモードのDレンジを選んでスタートするとスムーズに加速し、モーター音はほとんど聞こえない。

市街地、高速域を含めて走り始めるとロードノイズのほう目立ってしまうため、ドライブトレーン系のノイズは耳に届かない。もともと静かなEVのためロードノイズがやや気になるが、ガソリン車のゴルフより小さい。EVらしい静かな室内でウインドーまわりからのノイズの侵入もよく抑えられている印象だ。

ドライビングで特徴的なのがDレンジでのアクセルオフの惰性走行。回生はしないため滑走している感じで、車速は走行抵抗によって緩やかに落ちていく。下り坂ではアクセルを戻しても車速が落ちず、急坂なら逆に加速することもある。

信号などや前車に追いついて減速したいときには、シフトレバーを助手席側に横方向に動かすとD1となり回生がかかり、さらに横方向に動かすとD2、D3と回生が強くかかり減速する。D3はD1の3倍の回生になるため減速感が強く、フットブレーキを使わなくても減速が可能だ。

ドライバーが前方の交通状況によって回生量を選ぶことで、無駄が少ない走行が可能になる。ただメーター右下にあるシフトポジションの表示が小さいため、視線移動が多くなるのが難点だ。メーター上部のディスプレイにシフトポジションを表示できると視線移動が少なくてすむ。

高速道路でジョイントを通過しても突き上げ感が少なく、フラットな姿勢のままだ。バッテリーの重さと前後バランスがいいようで、ガソリンのゴルフ以上に快適な乗り心地を実現している。

重いバッテリーをフロアに搭載する走行フィールは、いい意味である程度車重がないと表現できない落ち着き感があるのも事実。バッテリーの搭載位置で前後バランスを調整できるのもEVの隠れたメリットといえる。

e-ゴルフの車両価格は何と499万円もする。平成29年度クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金は30万1000円だから、補助金を使ったとしても約470万円は高い。リーフは最上級グレードのGでも約399万円。この差は大きい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★

丸山 誠|モータージャーナリスト/AJAJ会員
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。

《text:丸山 誠》

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