実用的なモデルが多く、激戦区となっている欧州Bセグメントのなかで、大ヒットモデルとなっていたシトロエン『C3』がフルモデルチェンジした。
新型シトロエンC3は見た目の通り、びっくりするほどのユニークなスタイリングで登場した。丸みを帯びた5ドアハッチバックのシルエットに、特徴的なライトまわり、そして前後ドアに配置されたエアバンプと呼ばれる衝撃緩衝材が貼り付けられている部分だ。
搭載されるエンジンは1.2リットルの3気筒ガソリン、最高出力は110馬力、最大トルクは205Nm。ミッションはコンベンショナルな6速ATが組み合わされている。動力性能はごく普通で、びっくりするような感覚はないが、実用域での使い勝手は十分によく、Bセグにはぴったりの特性といえる。
サスペンションはフロントがストラット、リヤがトーションビームとなる。もちろん、前後ともにコイルスプリングを使っているが、なんとも不思議な乗り心地。ゆったりとしていて柔らかく、シトロエンお得意なハイドロニューマチックを思い出させるフィーリングだ。
もしかしたら、シトロエンだからハイドロサスのようだと感じるのかもしれないが、かつての味付けを上手に再現しているのはなかなかの腕前。柔らかいけどしっかり動いて路面をつかんでいく。サスストロークが長く、初期の動きにフリクションがなく、動き始めるとダンピングが効く、そんな味付けだ。
Bセグという非常に実用性を求められるカテゴリーで、ユニークなアプローチを行ったことで特徴を持たせ、クルマを楽しむというスパイスを効かせたのがシトロエンC3といえる。味気ないクルマには乗りたくない、という人にはぴったりのモデルとなる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
《text:諸星陽一》