カーオーディオでは、取り付けの善し悪しが音の善し悪しに大きく影響する。当コーナーでは、そこにあるさまざまなノウハウを、1つ1つご紹介していこうと試みている。その第1章として、スピーカーの取り付けについての事柄から掘り下げている。
今週は、前回に引き続いて、『インナーバッフル』にスポットを当てていく。先週はまず、『インナーバッフル』の基本的な役割をご紹介した。今回は、これの製作について考察していこうと思う。
さて、カーオーディオプロショップでは普通、スピーカーを取り付けようとする際に、そのクルマに装着可能な『インナーバッフル』をワンオフで製作している。
素材には、多くの場合、“MDF”が用いられている。“MDF”とは「中密度繊維板」のことであり、つまりは、木材チップに合成樹脂を加えて熱圧成形されて作られる板である。比較的にリーズナブルで、さらには加工がしやすいので、カーオーディオ・インストールの現場ではさまざまな場面で使われている。
ただし“MDF”は、どちらかというと水や湿気に弱い。ところがクルマのドアの内部には、窓ガラスを伝って雨水が浸入してくる。なので、“MDF”を使って『インナーバッフル』を製作する場合には、なんらかの防水処理を施すことがマストとなる。
“MDF”ではなく、もっと強度の高い合板が使われるケースもある。硬い素材のほうがより強力にスピーカーを固定でき、また、音の響き方が良い、という理由でこれが選ばれることも少なくない。
形と大きさについても、各プロショップごとでさまざまなノウハウが存在している。限度はあるものの、大きいほうがより良い音響特性が得られると考えているインストーラーは多く、さらには、形を工夫することで響き方等をコントロールしようとするショップもある。
厚みをどうするかも、工夫を凝らすポイントの1つとなっている。基本的にはある程度の厚みが確保されることが多いのだが、厚くしていくほどに“筒状”になっていくので、スピーカーの裏側から発せられる音エネルギー(背圧)が抜けづらくなる。であるので、厚くするほどにより綿密な背圧対策が必要となる。
ちなみに『インナーバッフル』は、市販品もさまざまリリースされている。これらは、DIYでスピーカーを取り付けようとする場合に用いられることが多いが、プロショップでスピーカーの取り付けを依頼する場合にも、取り付けコスト抑制策としてこれが使われることもある。
なお、カーオーディオプロショップにおいては、ワンオフするにせよ市販品を用いるにせよどちらにしても『インナーバッフル』は必ず用いられる。これを使わずしてスピーカーが取り付けられることはない。『インナーバッフル』は、スピーカー装着におけるマストアイテムなのである。
今週は以上だ。次週もさらに、ドア内部の音響的コンディションを整えるメニューについての解説を続行する。お楽しみに。
《text:太田祥三》