50年以上の歴史を有する、ドイツの名門Hi-Fiブランド「FLUX(フラックス)」。カーオーディオ専門メーカーであり、スピーカーを主力としてきた同社がこの度、フラッグシップ『リファレンスシリーズ』のトゥイーターをモデルチェンジさせた。
そこには同社のこだわりとプライドが詰まっていて当然だ。この音質性能が大いに気になる…。というわけで、「FLUX」製品の正規輸入代理店であるイース・コーポレーション本社を訪ね、入念なる試聴取材を実行した。その模様を2回にわたってリポートしていく。
◆注目すべき変更点は、ハウジング、ならびに磁気回路の新機構。
新たに登場したトゥイーターの名前は、『HT29R』。そして同時に、同トゥイーターがセットされる2ウェイコンポーネントスピーカー、および、3ウェイコンポーネントスピーカーも合わせて刷新されている。ミッドウーファー、ミッドレンジ、パッシブクロスオーバーネットワークは同一だが、この新型トゥイーターを用いてサウンドを進化させたコンポ―ネントセットは、内容変更に伴い新型番が与えられている。
今回は、新フラッグシップ2ウェイコンポーネントスピーカーをテストし、新型トゥイーターによってこれがどのような音を聴かせてくれるのかを、じっくり確認してきた。
まずは、トゥイーター単体、および、各コンポーネントについて、概要をまとめておこう。
- ☆『HT29R』 税抜価格:11万円
- 仕様:29mmワイドレンジトゥイーター(ペア)
- ●定格入力:150W ●周波数特性:1kHz-40kHz ●最低共振周波数(Fs):740Hz● 能率:92dB ●取付穴直径:56mm ●取付深さ:27mm
- ☆『RC270』 税抜価格:27万8000円
- 仕様:16.5cm2wayコンポーネントスピーカー(セット)
- ●定格入力:150W ●周波数特性:66Hz-40kHz ●能率:92dB ●取付穴直径:142mm(ウーファー部) ●取付深さ:69mm(ウーファー部)
- ☆『RC370』 税抜価格:40万4000円
- 仕様:16.5cm3wayコンポーネントスピーカー(セット)
- ●定格入力:150W ●周波数特性:66Hz-40kHz ●能率:92dB ●取付穴直径:142mm(ウーファー部) ●取付深さ:69mm(ウーファー部)
磁気回路にも改良が加えられている。28mm径のボイスコイルとネオジウムマグネットから構成される回路に、クラドラベンディングシステムという通気孔が新たに設けられた。新型トゥイーターのサウンドは、よりワイドレンジに、そして高域特性が豊かになったとのことだが、この新機構が功を奏していることは確かだろう。
なお、振動板は従来機と同じくシルクドーム型で、1つ1つ手作業で“ハンドコート”フィニッシュされていることも従来どおりだ。
◆その音は「濃密」。表現の幅も広く、音楽をドラマチックに原音再生。
ところで今回、これと同時にサブウーファーの新シリーズも日本上陸を果たしている。それとの組み合わせによるテストも行ってきたので、それに関しては後編となる次週にご紹介する。
前編である今回は、早速、核心を突く。新2ウェイコンポーネント『RC270』のテストリポートをお伝えしていく。
最初に試聴環境をご説明しておこう。試聴場所はイース・コーポレーションの試聴室、そしてリファレンスパワーアンプとして使用したのは、同じくドイツのスーパーハイエンドブランド「RSオーディオ」の上級モデル、『RS A 20』(税抜価格:23万円)。PCをソースユニットとして使い、そこからの信号をUSB DACを介してパワーアンプへと送り込んだ。
使用ケーブルは以下のとおりだ。RCAケーブルが「グラウンドゼロ」の『GZCCリファレンス157RH』(税抜価格:3万円/1.57m)、スピーカーケーブルが「アウトストラーダ」の『UDI-AS-2』(税抜価格:3400円/1m)、パワーケーブルが「チェルノフケーブル」の『スタンダードDCパワー 8AWG』(税抜価格:1200円/1m)という陣営だ。
さて…。
試聴トラックを流し始めてのファーストインプレションは、「サウンドの濃密さ」だった。さすがはスピーカーブランドのトップエンドモデルと思わせる、風格ある豊潤な音が耳に飛び込んできた。
1音1音にはハリがありツヤがあり、そして余韻には深みがある。聴き心地が上々で、そして聴き応えも満点。とにもかくにもサウンドがリッチなのだ。
とはいえ、余分な誇張はなく、必要以上の装飾的な響きはない。むしろサウンドはストレートだ。音源がそのまま空気の振動となっているイメージなのだ。
ただし、表現の幅広さには目を見張るものがある。ソリッドな音は至極ソリッドに、響きが美しい音はとことん美しく聴かせる。音源を忠実に再生できるからこその表現力だと言っていいだろう。ダイナミックレンジも広ければ、抑揚も大きく、音楽をドラマチックに再現してみせた。
帯域ごとの音に耳をそばだててみると、それぞれで音質が充実していることが確認できた。高域は繊細かつスムーズで、まさしくシルクのような耳当たり。なんとも耳に心地良い。中域はぶ厚く、ボーカルもリアリティ高く聴かせてくれる。低域は弾力感と密度感が高く、グルーヴ感の表現も申し分ない。
改めて、「FLUX」スピーカーの良さを、つくづく感じ取ることができた。リーズナブルな製品から充実させているブランドであるので、ユーザーフレンドリーである印象も強いが、ハイエンドモデルもなるほど高品質だ。サウンドに貫禄がある。
ところで当機は、パッシブクロスオーバーネットワークも上質だ。次回は、それをバイアンプ接続してのテストの模様をお伝えしながら、魅力をさらに明らかにしていこうと思う。併せて、新たなサブウーファー群の詳細もお伝えしていく。次週もお読み逃しなきように。
《text:太田祥三》