リーズナブルな製品を揃えながら、それぞれのコストパフォーマンスが高いと評判の、英国ブランド「ヴァイブ オーディオ」。同社の2016年モデルがこのほど日本上陸を果たしたのを受け、即、それらの試聴取材を行った。今週はその、最後のリポートをお贈りする。
◆手頃なスピーカーを、質良く鳴らせる実力アンプ。
今回は、先週の記事でじっくりと概要をお伝えした、「ヴァイブ オーディオ」のトップエンド、『CVEN(シーヴェン)シリーズ』に属するパワーアンプ、『CVENS2-V4』(税抜価格:13万7000円)の試聴記をお伝えしていく。
試聴会場は、「ヴァイブ オーディオ」の正規輸入代理店であるイース・コーポレーションの試聴室。試聴に使ったスピーカーは、今回日本に到着したばかりの、同ブランドの新製品、『BLACKAIR6C-V6B』(税抜価格:3万6000円)と、『BLACKDEATH6C-V6』(税抜価格:5万円)だ。
なお、それらを従来モデルのパワーアンプ『BLACKAIRS4-V1』(税込価格:6万3000円)で鳴らしてみたインプレッション・リポートは既にお伝えしたとおりだ。そこからパワーアンプを当機に替えて、サウンドはどのように変化したのか…。
まずは、『BLACKAIR6C-V6B』(税抜価格:3万6000円)を鳴らしてみた。
ところで、先に使っていたパワーアンプ『BLACKAIRS4-V1』(税込価格:6万3000円)は4chアンプである。対して、『CVENS2-V4』(税抜価格:13万7000円)は2chアンプ。1chあたりの価格はかたや約1万5000円、かたや、約7万円。サウンドは相当に違ってしかるべしだ。
実際、『CVENS2-V4』で鳴らしたサウンドは、まったく別ものだった。
音色のリアルさと、サウンドステージの立体感が、一変したのだ。これまでの音もバランスが整っていて、メリハリもあり、音の輪郭もシャープだと感じていたが、こちらの音
はレベルが違う。“本物”だ。
音色を作っている感じはなく、素材をそのまま再現している感が強い。もともとの音を、情報量豊かに、しっかりと紡ぎ出している。素直で正確な音なのだ。
よくよく考えてみると、スピーカーはエントリー寄りのミドルグレードモデルである。それであってもパワーアンプに上級品をおごれば、これほどまでに仕上がりが良くなる…。“一点豪華主義”という楽しみ方はアリだ。
しかし、このパワーアンプはなかなかだ。まさに掘り出し物を見つけた気分だった。
◆筐体の大きさと出力の大きさはダテじゃない…。
次がいよいよ最後の試聴だ。使用スピーカーを、「ヴァイブ オーディオ」の新たなミドルハイグレードスピーカー、『BLACKDEATH6C-V6』(税抜価格:5万円)に替え、早速音を出してみると…。
こちらのスピーカーも、どちらかと言えば手頃な価格帯に入っている製品だ。しかしながら、音がさらにきめ細やかになり、その上で芯も入ってきた。音楽のエネルギー感も上がっている。リアルさもさらに増し、立体感の表現もワンランク上がった。
そして改めて感じたのは、“余裕”だ。余裕しゃくしゃくでスピーカーを操っている。それも当然だ。当パワーアンプは筐体がかなり大きい。一番長い辺では64.7cmもある。それに比例して、出力も大きい。4Ω接続で、定格出力が350Wx2を叩き出す。
パワーは大きい音を鳴らすときにももちろん必要だが、普通に鳴らすときにも、大きな利得を発揮することを再認識することができた。アンプがスピーカーをしっかりと支配下に置いているイメージだ。確実に動かし、確実に止めている。結果、音のハギレが良く、音楽のグルーブ感も上がっている。
余韻もより美しく響くようになった。制動が効いていることで余計なにじみがなくなり、余韻が余計なものに邪魔されなくなったからだろう。
今回の取材を終えて、「ヴァイブ オーディオ」のことを見直した。よく鳴る廉価な製品をしっかりと作れるその技術は、コストをかけた製品でさらに活きてくる、というわけだ。同ブランドの実力は確かだ。
エネルギッシュなミドルグレードのパワーアンプを狙っている方は、『CVENS2-V4』も候補に加えてみると面白いのではないだろうか。インストールスペースをある程度必要とするので、その点ではお手軽なモデルではないが、スペースさえ確保できたら、予想以上の結果が得られるかもしれない。
このブランドには、幅広い層を満足させる力がありそうだ。
《text:太田祥三》