日産『セレナ』新型をサイドから見ると、Aピラーがフロントフェンダーに“食い込んでいる”ように見える。これは、モノフォルムを強調するためのデザイン上の工夫だった。
「ミニバンのデザインの基本はモノフォルムだ。今回Aピラーをブラックアウトすると、上屋を支えるものがなくなって見え、クルマ全体が弱々しく感じてしまった」とは、日産自動車グローバルデザイン本部プロダクトデザイン部プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さんの弁。実はスケッチの段階ではそう感じなかったが、モデル化した時点で気付いたという。
そこで、よりモノフォルムに見えるように、「まずAピラーの着地点を前に出したい。しかし、(Aピラーを)寝かすことは出来ないので、下におろしたのだ」と説明。更に、「その着地点を出来るだけヘッドランプと近づけて、ヘッドランプからAピラーまでの一体感を作った」とAピラー周りのデザインについて述べた。
このヘッドランプは2段構成である。この意味について入江さんは、「実は2段ではなく、上の方はボディサイドからAピラーに続く仲間、いっぽう下の方はグリルにつながっている。つまり、ヘッドランプを2分割にしたのではなく、流れを変えている」と、デザイン構成が違っていると説明した。
《text:内田俊一》