独自の世界観を突っ走る『DS 5』。見るからに大柄なボディ。そして、キャビンがぐっと平たく押さえられたスタイル。さらにヘッドライトやグリルあたりにはスパイスのあるデザインラインが加えられ、マイウェイばく進中である。
ドアを開けてもその路線にぶれはなく、視界に入るインテリアはスイッチの位置といい形状といい、レザーシートのざっくりとした模様といい、運転席に座る人の包み込み感といい、比類なき存在感を示している。
ただ、残念なのは、運転席に座ると天井からの圧迫感があることだ。せっかくこれだけの大きさと伸びやかなフォルムを持つというのに、運転席での狭さ感がのしかかってくる。ルーフ部分は、運転席・助手席・後席と、部分的に分かれてグラスルーフがあるものの、それでもなんだか狭いのである。運転席からのウェストラインもどことなく低く体が浮いている気分になり、できることならあと数センチ、シート座面を下げたい感覚になる。もしも下げることができたなら、天井の圧迫感からも開放されるのにと思うと、ちょっともったいない。
しかし、このDS 5の決定的な残念ポイントは、エンジンパワーが足りていないというところ。1.6リットル+ターボは、『DS 3』に搭載されているのと同じタイプ。車重が360kgも多いのだから、同じはないだろうと感じるのは私だけではないだろう。しかも、クルマの性格からして二人以上で乗ることも多いだろうし、つまり、もっと重い状態で走るだろうし、これではフラッグシップモデルの称号がもったいない。
プジョー・シトロエンでは、ディーゼルエンジンの日本導入も視野に入れているというけれど、このDS 5にこそ、トルクのあるディーゼルを採用してもらい、独自のデザインの世界を、おおらかに余裕をもって体感させてもらいたいものである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。
《text:岩貞るみこ》