本格システムを組むときのキーアイテム、パワーアンプの選び方、使い方を解説している。その第3回目となる当回は、サブウーファー用のパワーアンプにスポットを当てる。フロントスピーカーとの兼ね合いや、サブウーファーユニットとの相性等々、多角的に考察していく。
■今回の講師は、“ケンテック”(佐賀県)の筬島(おさじま)さん
今回は、佐賀県の気鋭ショップ、“ケンテック”の筬島さんにご教示いただいた。
まずは、フロント2ウェイ(パッシブクロスオーバーネットワーク使用)+サブウーファーといミニマムな本格システムを組む場合の、最初のパワーアンプ選びについて話をお訊きした。
これまでにご紹介してきた話の中では、「4chアンプ1台を用意して、その2chを使ってフロント2ウェイを、もう2chをブリッジ接続してサブウーファーを鳴らすというシステムレイアウトが基本となる」、とお伝えしてきた。今回はそこを敢えて、“サブウーファーをしっかり鳴らす”ことに重きを置いて考える場合ならばどうなのか、という質問からぶつけてみた。
「サブウーファーをしっかり鳴らす、という観点で考えたとしても、4chアンプ1台ですべてをまかなうというアプローチが面白いと考えています。サブウーファーに重きを置くとしても、フロントスピーカーとのパワーバランスを無視するわけにはいきません。フロントスピーカーもサブウーファーも同じアンプで鳴らすこのシステムレイアウトは、実に理に叶ったシステムなんです。サブウーファーはブリッジ接続で鳴らすわけですから、十分にパワーはかけられますし。バランスとしては、これくらいがちょうどいいと思います。
例えば、レゲエやヒップホップといった、低音を重視する音楽が好きだというのなら、最初からパワーの大きな、サブウーファー用のモノラルアンプを用意する、という作戦もあり得ます。パワフルなモノラルアンプでサブウーファーを鳴らせば、車内の空気をしっかり揺さぶることが可能です。そこのところをとことん重んじるというのなら、それもアリだと思います。
しかしその場合は、できればフロントスピーカーにもしっかりとパワーをかけられるアンプを用意したいですよね。サブウーファーを目一杯鳴らしても、フロントが負けてしまっては効果は半減します。どのような場合であっても、“バランス”はとても重要だと思うんです」
なるほどだ。サブウーファーにパワーをかけたい、思いっきり鳴らしたい、と考える場合は、フロントスピーカーの鳴らし方にも気を配るべき、というわけなのだ。
■サブウーファーユニットとパワーアンプ、予算を多くかけるべきは、前者
さて次には、サブウーファーユニットとパワーアンプとのバランスについてお訊きした。
「製品の特徴やサブウーファーボックスのタイプ等々、状況もさまざまですので一概には言えません。いろいろな考え方がありますよね。
個人的には、サブウーファーの定格入力とパワーアンプの定格出力は、同レベルであることが望ましく、しかしながらそこに固執する必要もない、と考えています。そして、バランスが取れていないケースにおいては、サブウーファーの定格入力のほうがパワーアンプの定格出力より大きい、という形のほうが上手くいく、とも考えています。逆はあまりお薦めしていません。
つまり、サブウーファーユニットとパワーアンプのどちらかにしか多くの予算をかけられない、という状況だったとするならば、サブウーファーユニットのほうに予算を注ぎ込むほうがいい、と思うんです。
サブウーファーの良し悪しは、音色の良し悪しに直結します。パワーアンプの良し悪しは、大きなパワーをかけられるかどうかに効いてきます。その2つを天秤にかけるなら、音色の良さを確保することを優先すべきだ思うんです」
さて、もう1つ質問をぶつけてみた。とりあえずフロントスピーカーは純正のままにしておいて、サブウーファーの導入から入る場合には、その時のパワーアンプ選びはどのようにするといいのだろうか。
「その場合でも、サブウーファー用のアンプはモノラルアンプではなく、4chアンプ、もしくは2chアンプをセレクトしておくべきだと思います。そうしておけば、後にフロントスピーカーを強化しようとしたときに、その4chアンプないし2chアンプが無駄になることがありません。最初にサブウーファー用にモノラルアンプを導入してしまうと、それはサブウーファーにしか使えませんので、融通が効かないんですよね。
なので、できるだけ上級なサブウーファーユニットを用意しつつも、パワーアンプについてはフレキシブルに考える、という入り方が、後々に活きてくる入り方だと考えています」
さて、今週の“まとめ”だ。
・サブウーファー用のパワーアンプ選びは、フロントスピーカーとのパワーバランスを重視して行おう。
・低音を強調したいのであれば、パワーをかけてしっかり鳴らし、かつフロントもそれに負けないように強化しよう。
・サブウーファーユニットとパワーアンプ、どちらかにしか予算をかけられないのであれば、まずはサブウーファーユニットのほうに予算をかけよう。
低音を重視する方は特に、今回の話を多いにご参考にしていただきたい。良質な低音は、音楽に活力を与え、かつ、中域、高域の再現性も良化させる。的確なパワーアンプ選びを実践して、充実の低音再生を目指してほしい。
《text:太田祥三》