絶大な人気を誇るアメリカン・カーオーディオブランドの雄「ロックフォード・フォズゲート」から、新たなパワードサブウーファーが登場している。その名は『PS-8』。
激戦のパワードサブウーファー市場の中で、当機はいかに光を放つのか。実力を徹底的に検証してきた。
◆重厚感のあるルックス。手にした感触もイメージどおり…。
試聴記をお伝えする前に、当機の基本的なスペックをご紹介しておこう。
- 『PS-8』(税抜価格:6万8000円)
- ●仕様:8inch(20cm) チューンナップサブウーファー (アンプ内蔵) ●ボックスタイプ:密閉型(薄型) ●定格出力:150W ●周波数特性:25Hz~150Hz ●S/N比:91dB ●サイズ(幅x奥行x高さ):354×239×85mm
なお、『PS-8』には、セットアップ時に必要なワイヤリングキットも標準装備されている(RCAケーブルを除く)。それらは基本的にすべて、コネクター & プラグ構造が採用されていて、接続がワンタッチ感覚で行えるとのことだ。当機をラゲッジスペースに搭載した場合は特に、これがメリットとして効いてくるだろう。
ところで、「ロックフォード・フォズゲート」のパワードサブウーファーといえば、『JPS-100-8』(税抜価格:4万5000円)という人気モデルもある。同機は「ロックフォード」の正規輸入代理店であるイース・コーポレーションが毎年年末に発表する『CAOTY』(同社取り扱い製品の売れ筋ランキング)において、“パワードサブウーファー部門”で4連覇を継続中だ。
すでに売れ行き好調という『PS-8』。年末の『CAOTY 2016』では『JPS-100-8』の順位を脅かすのか否か…。
ちなみに『PS-8』は『JPS-100-8』に対して価格が2万円ほど上昇する分、パワーアンプの出力がぐっと大きくなっている(『JPS-100-8』の定格出力は60W)。ただし、2モデル間でのスペック的な大きな違いはそれくらいだ。その他、S/N比や周波数特性、さらには筐体サイズもそれほど大きく違わない。
しかしながら、ルックスは大きく異なっている。『PS-8』の外観は至ってシンプルだ。全体がマットブラックで渋く仕上げられ、装飾的なパーツは、中央のメタルロゴのみ。重厚感を押し出したデザインとなっている。
実機に触れてみたのだが、手にした印象もルックスのイメージどおりだった。ズシリと重く、屈強なのだ。“鉄の塊”というほどの頑丈さを感じた。パワードサブウーファーは、頑丈であればあるほど良いとされている。パワーをかけたときに、ボックス自体が共振してしまうことはNGだからである。その点『PS-8』は、ボディが鳴るようなことはなさそうだ。
パワーが増強され、それに対してボディ剛性も高いとくれば、音への期待は膨らむばかりだが…。
では、試聴リポートに入っていこう。最初に、試聴システムをご紹介しておく。PC→USB DAC→パワーアンプ→スピーカーというシステムに、『PS-8』を組み込んで試聴した。リファレンススピーカーは「MTX Audio」の新機軸3ウェイコンポーネント『IMAGE PROシリーズ・IP663』(税抜価格:7万5000円)、リファレンスパワーアンプは「RS Audio」の『RS Revelation A40』(税抜価格:25万円)。パワーアンプは4chモデルであるが、試聴においてはそのフロントchのみを使用した。3ウェイスピーカーのクロスオーバーは、スピーカーに付属のパッシブクロスオーバーネットワークで行い、ケーブル類はすべて「モンスターカーオーディオ」で統一されていた。
試聴において、サブウーファー側のローパスは80Hzに設定した(スロープは-12dB/octで固定されている)。ミッドウーファー側はハイパスせずにフルレンジで鳴らした。◆音質は至って良質。そして、エネルギー感も十二分…。
まずは『PS-8』を鳴らさない状態で、試聴システムのサウンドを確認した。『RS Revelation A40』の特長が色濃く出た、冷静で正確なHi-Fiサウンドが堪能できた。高解像度で高S/N。全体が至ってクリアだ。サウンドステージの立体感、リアル感も申し分ない。このあたりは、スピーカーの利点が発揮された結果でもあるだろう。
さて、そこに『PS-8』のサウンドを足してみた。手元に置いたレベルコントローラーのツマミをゆっくりとプラス側へ回していくと…。
その操作幅に呼応して低音に芯が入り、量感が加速度的に増していく。MAXまで上げずに中程で一旦ストップさせたのだが、それくらいでも十二分に低域が増強されている。
その低音の質感は、あくまでもナチュラルだ。雑味がなく、もちろん歪みも一切ない。至って良質な低音が奏でられている。ボディの剛性が効いている結果だろう。箱鳴りは一切していない。
そして、印象的だったのはエネルギー感。パワードサブウーファーの場合、低域の量感は増しても、エネルギー感が不足がちなケースはえてしてある。それは、振動板のストローク幅が限られるパワードサブウーファーではある程度いたしかたないことだ。しっかりと空気を震わせる本格ユニットサブウーファーのような低音を望むのは、酷なのだ。
ところがこのパワードサブウーファーは、ひと味違っている。本格ユニットサブウーファーが表現する低音に迫る、躍動感のある重低音が聴けたのだ。
また、中域、高域の音も、確実に良化させている。厚みと深みが増しているのだ。音の土台がしっかりしたことで、倍音の乗り方が変わったのだろう。サウンド全体に充実感がみなぎっている。
その音を十分に味わった後、一旦レベルコントローラーのツマミを最小方面に回してみた。するとどうだろう。先ほどまでは心地良かったそのサウンドに、味気なさを感じてしまったのだ。『PS-8』が相当に効いていたことを、ここでもまた実感した。
『PS-8』の実力は本物だ。ここまでの本格的な低音を聴かせてくれるパワードサブウーファーはそうそうない。良質な、かつ力強い低音が欲しいが、しかしクルマの積載性、機能性は落としたくない…、そう考えたときにはぜひ、『PS-8』のことを思い出してほしい。これならば、合理性と音質を、高いレベルで両得できるだろう。選んで後悔のないモデルであることは確かだ。
《text:太田祥三》