アクセスランキング

電車遅延で入学式や面接に遅刻…弁護士に聞く責任の所在や対処法

教育教育

弁護士 篠田恵里香氏(東京弁護士会所属)全 1 枚写真をすべて見る

 いよいよ4月。新しい制服に身を包んだ生徒や学生、スーツを着た新社会人の姿を見かけるようになる時期だ。通勤、通学には欠かせない公共交通機関だが、遅延に関するトラブルはよく耳にすることだろう。

 急いでいる時などは特に困ってしまう遅延だが、法律では、誰にどのような責任を問えるのだろうか。入学式や入社式、就活生の説明会や面接に向かう際に覚えておきたい点について、アディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士に聞いた。

遅延のせいで入学式や就活面接に遅刻、責任は誰が負う?

 電車が遅れ、大事な入学式や面接に遅刻とはショックですね。「慰謝料を払え」と言いたい気持ちも分かります。ただ残念ながら、列車の遅延を理由に鉄道会社に責任を問うのは難しいでしょう。

 鉄道会社と乗客との間には、「切符を購入」または「交通ICをタッチ」した時点で「目的地まで乗客を運ぶ」「これに対して運賃を支払う」という旅客運送契約が成立しています。この契約の内容は通常、鉄道会社が定める「運送約款(うんそうやっかん)」にしたがうこととなります。運送約款とは、いちいち個人と契約を結ぶのではなく、不特定多数の利用者との契約を処理するため、あらかじめ定型的に定められた契約条項の事を言います。

 約款には通常、「列車遅延による損害については原則責任を負わない」旨の規定があるはずです。鉄道会社に重大な過失がある場合は、約款にも関わらず責任追及できますが、人身事故や故障等の通常の列車遅延の場合、鉄道会社に責任を追及するのは難しいと言えるでしょう。

◆いたずらの場合は犯人に損害賠償を請求できるか

 線路に石を置いたなどのいたずらにより遅延が発生した場合、その犯人につき、不法行為が成立します。したがって、このいたずらで損害を被った方は、この犯人に対し、損害賠償請求をすることが可能です。ただ、入学式や面接などに遅れたことに対する精神的苦痛が、「法的権利の侵害」とまで判断されるか否かは微妙かもしれません。遅延により、余計に要したタクシー代や無駄になったコンサートチケット代等は請求できると言えるでしょう。

移動中の事故で慰謝料を請求できる場合もある

 バスやタクシーで移動中、事故で怪我をした場合、治療費や怪我の慰謝料を請求することになります。単純な追突事故であれば、追突した後続車の運転手のみに過失ありとされるので、その運転手(通常は加入している保険会社)に対して請求します。出会い頭の事故など、バス・タクシーの運転手にも過失がある場合は、後続車のほか、その運転手にも請求ができます。ただし、やはり入学式などの遅刻に対する慰謝料請求は難しいといえるでしょう。

 以上のように、残念ながら列車遅延に関しては、原則鉄道会社の責任を問えません。なので、自分の身は自分で守ることが大切です。入学式や入社式などは、初めてのことで準備にも時間がかかるかと思います。時間には十分余裕をもって、できれば振替運転でも間に合うくらいの時間的余裕をもてると良いですね。
---
篠田恵里香(弁護士)
 東京弁護士会所属。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。夫婦カウンセラー(JADP認定)資格保有。独自に考案した勉強法をまとめた「ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法」(あさ出版)の執筆ほか、「Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ」(テレビ朝日)などメディア出演も多い。

協力:アディーレ法律事務所

《text:編集部》

編集部ピックアップ

TOP