イース・コーポレーションが発表した、売れ筋ユニットのランキング、【CAOTY2015】。それにおいて上位入賞を果たしたパワーアンプについて、大規模な試聴取材を敢行した。
今週からはその最後を締めくくるべく、「4chパワーアンプ10万円以上部門」へと足を踏み入れる。
その前編となる今回は、第5位から第3位までに入賞したモデルについてのインプレッション・リポートをお贈りする。
なお、試聴においてリファレンス・スピーカーとして使用したのは引き続き、RSオーディオの「RS Revelation 165」(税込価格:22万6800円)。ケーブル類はすべて、モンスターカーオーディオを使用した。
第5位 グラウンドゼロ GZPA Reference 4XS
(税込価格:23万7600円)
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【CAOTY2014】の第6位から1ランク順位を上げた当機。ちなみに昨年の第5位は同じくグラウンドゼロの「GZPA Reference 4」(税込価格:38万8800円)であった。そちらはなんと、第10位にまで順位を落としている…。このような事態となった理由はずばり、RSオーディオの『RS Revelationシリーズ』が登場したことにあるだろう。高額アンプを検討するユーザーの目がそちら(同部門においては「RS Revelation A40」/税込価格:27万円)に流れ、「GZPA Reference 4」が割を食った格好となっている。
しかしながら当機は踏ん張った。グラウンドゼロ『Referenceシリーズ』としての第5位を死守して見せたのだ。「RS Revelation A40」は確実に高額パワーアンプの勢力図を書き換えたのだが、グランドゼロを圧倒するところまではいかなかった、というわけなのである。この闘いはむしろ【CAOTY2016】が本番となるだろう。早くも結果が気になるところだ。
さて当機は、評判の『Referenceシリーズ』のサウンドを、もっとも手軽に手にできるモデルである。最高峰の2chモデルでは1chあたりの価格が約18万円。それに対して当機は1chあたりの価格は約5万5000円というリーズナブルさだ。ここまでの価格差がありながら、『Referenceシリーズ』らしいサウンドが聴けるのか。そこに焦点を定めて試聴を開始した。
音が鳴り始めた瞬間に、実力が確かであることを確信できた。その前までに聴いていた「6万円以上10万円未満部門」の各モデルの音とは、明らかに次元が違った。音のきめ細やかさが格段に向上している。とにかく滑らかだ。そして、1音1音の質感の良さが素晴らしい。
さらに思ったのは、表現力の幅広さ。パワーのある音はどこまでも力強く、優しい音はどこまでも柔らかく再現する。この音は紛れもなく『Referenceシリーズ』の音だ。良いアンプであることを、つくづく再認識できた。
第4位 ロックフォード・フォズゲート T1000-4ad
(税込価格:22万6800円)
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第4位に輝いたのは、当機「T1000-4ad」である。【CAOTY2014】で得た順位をしっかりと守った。ちなみに当機は、税抜価格20万円以上、というくくりで見ると、堂々のトップに位置する。高額モデル戦線において、グラウンドゼロとRSオーディオが凌ぎを削る中、そのあおりを食うことなく、安定した強さを発揮した。
さて当機は、ロングセラーを続ける『パワーシリーズ』の中においては、登場年は比較的に新しいモデルである。新世代増幅回路、”Class-A/D”を採用し、小型 & ハイパワー、かつ高効率を実現したモデルとなっている。前型である「T1000-4」と比べて、相当な小型化が達成されている。
ちなみに「T1000-4」は、その音質性能の高さゆえに多くのファンに支持された正真正銘の名機だった。ラインナップからなくなってしまったことを惜しむ声は未だに聞かれる。その名前を引き継いでいる当機の音はどうなのか。改めてじっくりと聴いてみた。
一瞬の出音で、さすがは『パワーシリーズ』と思わされた。低域の力強さとキレ味が『パワーシリーズ』の持ち味だと認識しているが、当機ではそれらが円熟の境地に達していると言っていい。
レスポンスの速さ、制動の速さも十二分。音の立ち上がりが素早く、止まるのも速い。これによりキレ味がさらに高まっている。さすがは『パワーシリーズ』中の、マルチchアンプの最高峰モデル。その名に偽りはない。ロックフォードサウンドの神髄を、たっぷりと堪能できた。
第3位 JLオーディオ HD600/4
(税込価格:20万7360円)
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アメリカンブランドの雄、JLオーディオのフラッグシップシリーズに属する当機が、【CAOTY2014】からの順位を守り、第3位に輝いた。
ところで、第4位に入賞したロックフォードの「T1000-4ad」と当機は、価格差がかなり接近している。その意味においては2台はライバル関係にあるのだが、その闘いを当機は、2年連続で制した。名機『パワーシリーズ』の最高峰モデルをも上回る人気を博しているのだから、この順位には大きな価値がある。
【CAOTY】全体を見ると、ロックフォードの人気の高さと、グラウンドゼロの躍進が目立つのだが、「JLオーディオここにあり」を、この『HDシリーズ』が強く印象づけている。
ちなみに『HDシリーズ』と言えば、フルレンジDクラスアンプの先駆け的なモデルと言っていい。Dクラスアンプ=サブウーファー用というイメージが強かった時代に当シリーズは登場し、Dクラスアンプに対する評価を変えることに大きく貢献した。カーオーディオ史上においての、エポックメイキング的なシリーズでもあるのだ。
そんな名機の音を改めて確認すべく、試聴トラックをスタートさせると…。
曲が鳴り出して最初に感じたのは、ヌケの良さだ。明瞭なサウンドであり、1つ1つの音の輪郭がシャープだ。すっきり、くっきりと音楽を再現している。
低域は、量感がたっぷりというタイプではないが、良く締まった良質な低音を再現している。制動力も高く、しっかりと音が止まるので、リズム感も至ってきびきびとしている。ボーカルも前に出ていて、中域の解像度も高い。高域も粒立ちが良くクリアだ。
いかにも高級アンプという、説得力のあるサウンドが満喫できた。安定のクオリティだった。『HDシリーズ』も、まだまだ人気を保ち続けるであろう。実力は本物た。
さて次週は、「4chパワーアンプ10万円以上部門」の第2位、および第1位のモデルと、6位以下のモデルの中からチョイスした注目モデルについてのインプレッション・リポートをお贈りする。次週もお読み逃しなく。