例年、プレスカンファレンスのトリとして行われる基調講演に注目が集まるが、今年の主催は独フォルクスワーゲンがつとめた。ここ数年、もっとも大規模な基調講演は自動車メーカーが担うことが恒例となっているが、今回もそれを引き継いだ格好だ。
基調講演は1月5日午後8時過ぎ(現地時間)から、昨年アウディが行ったコスモポリタンホテルで行われた。この日早朝より開催されたプレスカンファレンスは報道関係者だけが入れるイベントだが、基調講演は一般参加も可能。そのため、会場となったホールは満席の状態となり、講演はその中で進められた。
プレゼンテーションを行ったのは、フォルクスワーゲン乗用車ブランドの取締役会会長 ヘルベルト・ディース博士。博士は講演の冒頭で、「ディーゼルエンジンのディフィートデバイス問題について米国だけでなく世界中のユーザーに迷惑をかけたことを心からお詫びする」との言葉から始めた。
本題となる基調講演では、『e-ゴルフタッチ』と『BUDD-e』の二つのコンセプトモデルが紹介された。その中で注目はやはりVWの次世代EVの方向性を示すものとして披露された「BUDD-e」だ。
VWは過去に親しまれた“ワーゲンバス”の雰囲気を彷彿させながらも、近未来の多彩な装備をいち早く取り込んだものとなっていた。手をかざすだけでスライドドアが開き、タブレット端末の情報を次世代インフォテイメント システム「In-Vehicle Infotainmen(IVI)」へ反映させるのもポイントになる。ホーム用機器とのつながりも視野に入り、この分野では韓国の大手家電メーカーLGとの協業が発表された。
当然ながらパワートレーンはEVで、新開発のモジュラー・エレクトリック・ドライブキット(MEB)を採用する。これはEVへと大きく舵を切ったVWの次世代戦略において重要な役割を担うもので、VWはこれを活かしてEVパワートレーンのモジュール化を図ってラインアップの拡充を図る予定だ。
このパワートレーンで見逃せないのはEVにもかかわらず600kmを超える長い航続距離を実現していることだ。バッテリーはフロア下に収納され、駆動方式は4WDで、最高出力は235kw(317ps)と発表されている。
最初に登場した「e-ゴルフタッチ」は、現行のゴルフをベースに、手の動きで操作できるIVIの採用がメイン。車名からするとタッチすることで何かができるように感じるが、実はそうではなく、機器に触らずに様々な操作ができるプロキシミティ(近接)センサーや自然言語処理による活用を進めたものとなっている。
すでに現行のゴルフのインフォティメント システム「Discover Pro」にも近接センサーは搭載済み。手をかざすとメニューが表示されるシンプルなものだが、「e-ゴルフタッチ」ではその機能をさらに発展されたものとなった。メーターパネルにはアウディと同様、NVIDIAのチップを使ったデジタルコクピットを採用。もちろんEV(電気自動車)となっている。
《text:会田肇》