1月8日に発表されたブリヂストン「プレイズ PXシリーズ」は、開発コンセプトである「疲れにくい」を実現するため、運転中のストレスを下げるようなタイヤとして設計されている。
「疲れにくい」というのは、意味は分かりやすいが、基準や指標があいまいな面もある。この点について製品発表会では、ブリヂストン タイヤ開発第2本部長 坂野真人氏が技術的な裏付けを解説した。
ブリヂストンでは、ドライバーの無意識な修正操作、余分な操作の蓄積がストレスとなり、疲労につながると考えた。例えば、車は直進しながらでも路面の状況などによって細かい修正操作を必要としている。ハンドルのブレや車体の揺れを少なくすれば、このような余分な操作を減らすことができる。コーナリングでは舵角が小さく、操作量が少ないほど最小限の操作で曲がれる。レーンチェンジでも、スッと入って揺り戻しが少ないほど修正舵が少なくて済む。
そのために求められるタイヤ性能は、直進時はヨーレートの変化(横揺れ成分)を抑えることで無意識なハンドル操作が減らす性能だ。さらに、コーナリングやレーンチェンジでは、タイヤの応答性がポイントとなる。舵角だけの問題ならステアリングギア比をクイックにすればよいかもしれないが、これだと、ハンドルを動かす量が少なくても大きい舵角がとれるというだけで、実際に車が描く軌道がスムースになるわけではない。むしろ繊細な操作が必要となり、かえってストレスが増すことになる。
坂野氏によれば、PXシリーズでは、以上の性能を実現するため、サイドウォールの強化と非対象化、ショルダーブロックの剛性アップ、といった技術を投入したという。タイヤのイン側、アウト側を非対象形状とするのは直進安定性の向上に効果がある。走行中のタイヤは直進時でもサスペンションがストロークしており接地面に均等に圧力がかかっているわけではない。むしろ、左右の形を変えることで接地性の最適化が図れる。ショルダーブロックの強化はステアリングの応答性を向上させるとともに、車の余分な動きを抑制する。
他にも3Dシミュレーションを活用した設計(ULTIMAT EYE)によって、リブやグループといった溝の形状やエッジの形状(=トレッドパターン)を直進時、コーナリング時ともに最適になるように設計している。しかも、今回設定された、セダン、ミニバン、軽の3車種ごとに専用設計を行っているという。ミニバンなら特有のふらつきの低減に、軽自動車は街乗りや据え切りを想定したさまざまなパターン、設計技術が投入されている。
《text:中尾真二》