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【中学受験2016】サピックス小学部に聞く「どうなる?2016年中学入試」

教育教育

インタビューに応えるサピックス小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏全 2 枚写真をすべて見る

 年々様変わりする中学受験。人気中学の受験日変更や、2次試験廃止などを受け、新たな受験計画と対策が必要になってくる。平成28(2016)年の中学受験における傾向と最新情報を、サピックス小学部(SAPIX小学部) 教育情報センター本部長の広野雅明氏に聞いた。

2016年の受験者数は横ばい傾向

 平成28(2016)年における全体の受験者数、難関校の志願者数については横ばい、あるいはやや増加傾向にある。「第2回合格力判定サピックスオープン」の受験者数は、2015年度は5,800名。2013年が5,312名、2014年度は5,348名と、やや増加している。

 今後少子化の影響で受験生が減ったとしても、少子化の影響は主に中堅以下の学校に現れる。上位校を目指す層は常に一定数いるため、受験者数によっての変動はない。

 学校別に見ると、2015年の学校別サピックスオープン(以下SO)では、渋谷教育学園渋谷(渋渋)が、昨年の570名から898名になり、もっとも増加傾向にあった。もともと女子では人気校であったが、共学校のため、男子校を望む層からは敬遠されていた。しかし、東大への合格率の高さと、大学の入試改革に伴う英語教育への期待で、人気が高まったと思われる。

2016年中学入試の変更点

 2016年の入試で、大きな変更点のある主な学校は以下のとおり。

男子:桐朋学園が2次試験を新設
女子:鴎友学園が3次試験を2次試験までに変更
共学:法政大学第二中の共学化、横浜英和学院の共学化(2018年~)
新設:千葉県立東葛飾中学校

 このうち、男子の桐朋学園が2月2日に二次試験を新設したことが、2016年のひとつのキーとなる。これまで2月1日に御三家を受ける層の2月2日の選択は、世田谷学園や攻玉社、本郷学園などが主だった。今年は2日に桐朋学園を受ける生徒の増加が見込まれるため、2日の男子校の受験地図が変わってくることが予想される。

 女子では、鴎友学園がこれまで2月1、2、4日と3回あった入試を、1日と3日の2回に変更した。試験日を増やす傾向がある中、減らすケースは珍しく、第一志望の生徒を迎え入れたいという学校の意向がうかがえる。この影響を受けて、2月3日を受験日としていた他校が受験日をずらすという傾向もある。

◆独自のカリキュラムをもつ学校が人気

 近年人気が上昇している学校としては、まず大学進学実績が上昇している早稲田や海城、攻玉社、豊島岡女子、鴎友学園女子、吉祥女子、渋谷学園渋谷などがあげられる。中でも高校募集を停止し中高一貫教育を徹底した海城は、6年間の男子の成長を考慮し、医学部講座などを設けるなど、学校で大学受験に臨む姿勢をつくっている点も評価される。

 女子では、鴎友学園女子は多読を中心にしたオールイングリッシュの英語授業など、系統だった形でシラバスを作り指導を行っている。一方で、芸術科目や園芸といった伝統の部分などもサポートする姿勢が、保護者の共感を得られる要因といえる。

 一方で、インターナショナルコースを設けている広尾学園や三田国際なども特徴的だ。入学時に帰国子女を幅広く集め、教科に関わらず、すべて英語による授業を行う。国内だけでなく、海外への進学や、国際社会に通用する教育をサポートしている。

 また、新校舎建設を軸とした学校改革を期待する学校としては、本郷、成城学園、桐朋学園、山脇学園などがある。山脇学園は短大の跡地に新校舎を設立し、大学レベルの機材を備えた実験室を集めた「サイエンスアイランド」や、英語教育向けの「イングリッシュアイランド」を設置しているのも特色だ。成城学園は、学校の伝統を守りつつも、学校全体の改革が進めている。新たに、グローバル対応プログラムなどにも注力し、注目の高い学校のひとつだ。

 また、桐朋学園も「自主性を貴ぶ」スクールカラーが御三家に近く、新設校舎の最新施設、トータルで子どもの力を伸ばしてもらえるという期待値もあり、人気が高くなっている。

 大学の附属校化・係属校化による進路の安定への期待という点では、法政大学付属や、青山学院と係属化が発表された横浜英和、中大横浜、東洋大京北などがあげられる。

 千葉県では東葛飾高校が中高一貫校として東葛飾中学を新設したことで、「東葛飾高校」のブランド力から多くの受験生を集めることが予測される。埼玉県は、これまで1月10~11日に栄東と開智の受験日がほとんど一緒だったが、2016年の変更で2校の特別コースが受験しやすくなった。これにより、埼玉の1月10日の午後入試は受験生の動きが変わってきそうだ。

公立の中高一貫校にも注目

 男女別の人気の傾向を比較してみると、男子は女子ほど共学志向が強くない。また進学実績からみても、東大進学率の高い男子校が人気だ。その中で、本人の個性にあわせた学校を選択していくことになる。

 近年注目され始めた公立の中高一貫校は、一般的には公立のみを受験する生徒が多いが、サピックス生においては、難関私立と併願して両方受験するケースが多い。公立校の適性検査は特殊な入試ではなく4科目の基礎学力をベースにした思考力と記述力なので、難関私立校との併願も不可能ではない。今後の注目は神奈川県で、2017年に新設予定の横浜サイエンスフロンティアの付属中が登場すると、かなりの人気となることが予測される。

1月入試や午後入試で確実に合格

 1人あたりの平均出願数(出願しなくても願書だけは用意する分も含む)は、約7校。実際に受験する数では、平均して1人5校。2月1~3日で3校、ほかに1月や2月4日以降、午後入試を受けるパターンが多い。帰国生入試なども含めると、最多で15校というケースもある。

 受験校を決めるにあたって大切なことは、第一志望を明確にすることと家庭の方針をはっきり決めること。第一志望に入れなかった場合にどうするかを話し合い、併願校を決めていく。男子の場合は特に試験で緊張してしまう子どもが多いので、1月に「試し受験」をするのも効果的。無理なく通学できる圏内であれば、まず1月に埼玉県か千葉県で受験し、進学する権利をもっておくと親子とも気持ちが非常に楽になり、その後の受験に迎えられる。1月の受験が難しい場合、2月1~2日の午前・午後のいずれかで合格しておくようにするとよい。

■トップ校と併願校の主なパターン■

【男子】
第1志望:開成
併願校:海城2次、筑駒、聖光1次、渋谷幕張1次、早稲田2次、栄光、渋谷渋谷2次など

第1志望:筑駒
併願校:開成(そのほかとして、駒場東邦・麻布・聖光1次)

第1志望:麻布
併願校:栄光、海城2次、渋谷渋谷2次・渋谷幕張1次、早稲田2次、慶應義塾中等部、浅野、芝2次

第1志望:慶應普通部
併願校:慶應義塾中等部、慶應義塾湘南藤沢中等部、浅野、聖光学院1次・攻玉社2次・青山学院中等部など

第1志望:駒場東邦
併願校:海城2次、早稲田2次、聖光学院1次、浅野、栄光学園、攻玉社2次など

【女子】
第1志望:桜蔭
併願校:豊島岡(そのほかとして、渋谷幕張1次、渋谷渋谷2次、筑波大附属、白百合、慶應中等部など)※豊島岡が圧倒的に多い

第1志望:慶應中等部
併願校:女子学院、SFC、雙葉、青山学院、立教女学院など

第1志望:女子学院
併願校:豊島岡女子1次、鴎友学園女子2次、渋谷渋谷2次、吉祥女子2次、浦和明の星女子1次、白百合学園など

第1志望:フェリス
併願校:横浜共立B、洗足学園2次、鎌倉女学院1次、慶應義塾湘南藤沢、頌栄女子学院2次、湘南白百合学園など

第1志望:雙葉
併願校:白百合学園、吉祥女子2次、豊島岡女子学園1次、慶應義塾中等部、鴎友学園女子2次、学習院女子中等科B

◆保護者は入試の準備に注力

 これから入試当日までの準備として、まず保護者は入試の事務上の準備をしっかりと心がけること。特に兄弟が入試を経験している場合、入試手続きなどが大きく変化しているので注意したい。たとえば開成などでは、従来の窓口出願から郵送出願に2016年分から変更になっている。このほか、インターネット出願も年々増加しており、出願方法の変更をチェックし、諸々の準備は万全にしておきたい。

 健康管理については、万全な体調で臨めるよう、インフルエンザの予防をはじめ、手洗いやうがいなどを徹底しておく。あわせて生活リズムを崩さないことも大切。受験直前に学校を休ませるケースもあるが、毎日通学することで、体を動かして友だちと話すというリズムを継続できる。

 保護者が勉強を手伝うのが難しい場合、「今年の10大ニュース」を子どもと一緒に考えたり、旬の野菜の知識を料理の中で教えたりなど、自分の得意分野で子どもの勉強に携わることは効果が大きい。

過去問は数を解いて慣れる

 11月からの最後の3か月は、子どもにとって重要な時期。この時期に志望校の過去問を解いてみると、最初は意外と点数が採れないことが多いが慌てないこと。過去問は、最後の3か月をかけて解き方を学んでいくもの。1年分を解き終えるごとに解説を読み、問題傾向やパターンを解き明かしていく。慣れの問題で、やればやるほど解けるようになっていくので、受験校の入試問題をしっかりやることが大切。

 ただし手を広げ過ぎず、今までやってきた内容で中途半端になっているものをしっかりやること。また、この時期だからこそ、通っている塾の授業をしっかり受けることも大切。塾では受験に近づくほど、大事なことを繰り返し教えてくれるので、それをしっかりと自分の力にしていきたい。

 12歳にとって中学受験は大きなイベントとなる。公立校にはない、子どもにあった教育方法を選ぶのが、私立校を選ぶ大きな目的である。必ずしも偏差値一辺倒ではなく、先を見て改革を試みて教育を考えている学校を選ぶのも一考だ。

《text:相川いずみ》

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