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【中学受験2016】日能研に聞く「私学の魅力と、学校選びのポイント」

教育教育

日能研本部取締役の茂呂真理子氏全 3 枚写真をすべて見る

 いよいよ大詰めを迎えた2016年の中学入試。日能研本部取締役の茂呂真理子氏、日能研本部/進学レーダー編集長の井上修氏、日能研子ども未来進学センター センター長の村上健氏に、「中学受験は家族の受験である」というテーマで、公立にない魅力を備える私立中学の特徴から、私学を選ぶ際のポイントまでを聞いた。

数値だけではわかりづらい私学の魅力

--2016年の中学入試の傾向を教えてください。

井上氏:今年の傾向を見ると、全体の受験者数に大きな伸びはありませんが、受験者数を伸ばしている学校もあります。2015年は2月1日が日曜日だったため"サンデーショック(サンデーチャンス)"と呼ばれ、女子のプロテスタントの学校の一部が入試日程を変更しました。そのため、2015年と2016年では、2月1日、2日入試校で増減が出ています。ただし、これは学校の中身に関係なく、環境による変化です。

 また、学校の内容について「どう学園生活を満喫するか」。勉強はもちろんですが、それ以外の学校行事やクラブ活動などのバランスのとれた私学に人気が集中している傾向が確認できます。

茂呂氏:学校を捉えるうえで大切にしたい点は、学校が人を育てる場所であるということを念頭においた際、保護者にとって価値があるのかどうかということになります。これはなかなか数値には出にくいものです。

--人気のある、魅力のある私学はどんな学校でしょうか。

井上氏:「この私学で自分は、我が子はどのように学び、成長し、過ごしていくのか」というところがイメージしやすく、期待感がもてる学校に対して共感する方が増えていると思います。ただ単に私学に行くというだけではなく、そこでどんな6年間を過ごしたいのか、あるいは子どもに過ごさせたいのかという視点です。そのビジョンが親子で描きやすいことが大きなポイントになっています。

茂呂氏:難関校ひとつとっても、定義が色々とあります。難易度が高いというのが一般的ですが、日能研では「学校はどういう人物がほしいのか」という格式の高さで定義したいと思っています。入試問題には学校の想いがあり、子どもの人物なりを表現できるような問題を出題する学校もあります。その問題を通して、学校がどういう人物を求めているのか。入試は授業の第1回と捉えて、研究し尽くさなければいけない。難関校の魅力というのは偏差値だけでなく、学校に受け継がれる部分をも含んでいると考えています。

--6年生でそこまで学校の希望を読み取るのは難しく、外側から見ただけではその学校の魅力がわかりづらいですが、私学を知り尽くしている塾の先生方に、個々の生徒に合わせたアドバイスをいただけるのでしょうか。

茂呂氏:日能研では、多様さがあっての私学であると考えていますので、私学に精通し、設立からの理念をたどり沿革まで研究し尽くした"私学ソムリエ"という職員がいます。単純な受験相談だけではなく、小学4~5年生から、これから進学する学校をどういう視点で見るかという指導をしています。

--成績ありきではなく、まず理念から学校を選ぶということでしょうか。

茂呂氏:選んでいく順番としては、まず学校をよく知ることから始まります。中学受験は子ども自身の受験だけではなく、家族の受験でもあります。家庭によっては、父親と母親で価値観が衝突することも起こります。偏差値上で入りやすいというだけでなく、小学4~5年生のうちから「家庭で大切にしていること」「どういう子どもに育ってほしいのか」というところから、さまざまな学校を見に行くことをお勧めしています。

 ですので、実際に併願が固まるのは6年生の11月ごろです。そんなにギリギリでいいのかという印象をもたれるかもしれませんが、そういったプロセスがあるので、じっくりと併願を選ぶことができるわけです。

◆自分の感覚で我が子に合う私学を見極める

--第一志望の難易度が高い場合、小学校低学年から受験の研究や準備は始めていたほうがよいのでしょうか。

茂呂氏:受験の研究というよりは、3年生ぐらいまではその時期に大事にすべきことをしてほしいと思います。私学の学び自体が「今を大事にする」というスタンスで、その時期の子どもたちに必要なものを実践するアクティブさと自由さをもっています。受験は試験対策で終わることなく、入学した後に伸びるために、その時々の学びを大切にすることが重要です。1~2年生に必要なことは、たとえば漢字や計算などの知識獲得の学習ではなく、身の回りの遊びの中から学ぶ、自然を感じることから考えるといった、本格的な受験勉強に入る前の素養を育てることを大事にしています。

井上氏:難関校に入った生徒の成績の推移を調査したところ、4年生の時点では必ずしも高かったわけではありません。偏差値40台から5~6年で60台まで伸びたという生徒もいました。ですから、4年生で難関校の成績に届かなくても、あきらめるといった話はしていません。

 それは私学の学びにも通じていて、私学は中高6年間あり、その間に成績が揺れることもあります。それをトルクと呼んでいますが、一度成績が落ちても復活する可能性をもっています。難関校以外でも、じっくりと6年間かけて伸ばしてくれる学校もあります。

--今の保護者が受験した時代よりも、大学進学率だけが売りではない、特徴のある私学が増えていますね。

井上氏:今でも大学進学率は、学校を選ぶ際の指標のひとつではあります。あくまで指標のひとつであって、オンリーではありません。逆に、まだ実績がなくても、ビジョンがしっかりしている学校は人気がありますね。

--人気の高い学校にはどんな特徴がありますか。

井上氏:授業だけでなく、行事、クラブ。この3つを大事にしている学校は人気が高いです。

村上氏:やはりわかりやすい例でいうとクラブ活動ですね。今は、クラブ活動を頑張っている生徒が進学も頑張っているという実績があります。勉強と夢の実現の両方に向けて頑張るというスタンスが私学に根付きつつあると感じています。

--魅力ある私学の見つけ方があれば教えていただけますか。

井上氏:自分の感覚を大事にすることです。学校説明会に行ったら途中で帰らず最後までいたほうがよいです。最後に校内見学があり、実際に自分の目で見ることができ、かつ先生と直接お話ができます。「自分が取材者になる」ことが大事です。

茂呂氏:保護者のお話を聞いていると、合わない学校は瞬時にわかるようです。私学は、価値観や考え方、背景が色濃く反映されているので、足を運んで自分の感覚で感じてみるとよいですね。

村上氏:合わない学校はわかりやすいのですが、一方で合うほうはわかりにくかったりします。そこで複数の私学にコミットし、「いいな」と感じた点を集めることにより、「我が家はここを大事にしていたんだ」というビジョンが明らかになっていきます。

◆家族で「いいね」を共有する

--家族間の対話が大事ですね。

村上氏:大切です。見学会の帰りに感想を言い合うだけでも違いますね。

井上氏:ちょっとした「いいね」を家族で共有してみてください。なぜいいのかということを共有することで、その理由がわかり、学校を探す視点につながります。数を当たるだけでなく、行った後は少しでもメモを残すことで、次につながっていきます。

村上氏:家族間で「いいね」を共有することにより、その後説明会に行った際にも、「自分には合うけれど、家族には合わないだろうな」といった考え方ができるようになります。

井上氏:あとは、ぜひお父さんにも説明会に行ってもらうことが大切です。今は夜に開催する説明会もありますので、会社帰りに行く方もいらっしゃいます。中学受験はどうしても母親と子どもが先行し、父親が取り残されてしまうことがありますので、お父さんもぜひ説明会に行き、「いいね」を共有してみてください。

--受験した卒業生のお話を聞かれることもありますか。

村上氏:日能研では毎年、私学に進学した日能研OBとOGに自分の学校の魅力を伝えてもらうイベントを各地で開催しています。参加した小学生の受験生に、OBやOGたちが自分の進学した学校の授業や魅力について直接話してくれます。必ずしも話すのが得意でない子もいますが、一生懸命魅力を伝えようと頑張っています。「自分も受かったら、ここで話したい」という、縦のつながりも生まれます。

入試では「毎日が第一志望」という気持ちで

--新校舎や共学化といった変更も、人気の要素になりますか。

井上氏:共学化、新校舎、大学の名前を冠することは人気要因のひとつにはなりますが、問題はその中身です。たとえば新校舎であれば、どんなコンセプトで作られたかという点が重要です。一例をあげると、桐朋では予算のかかる天文道具について、その必要性を討議した結果立派なプラネタリウムを建設しました。こういったプロセスを経て作られた新校舎というのは、大きな魅力だと思います。

--私学をめざす受験生、家族に向けてのメッセージをお願いします。

茂呂氏:日能研では「毎日が第一志望」という話をしています。入試は、毎回が第一志望だという気持ちで臨み、入った学校での6年間を悔いなく過ごせるようにしてください。

--ありがとうございました。

《text:相川いずみ》

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