取材協力:ヴァイブス(石川県)
高級スピーカーの世界的リーディングブランドたる『FOCAL』の幅広いラインナップの中から、注目ラインの1つ、“カスタムフィットモデル”シリーズにスポットを当てている。これまでの2週は、パワードサブウーファー+2chパワーアンプ+DSPという複合機、「DSA 500 RT」をクローズアップした。今回はカスタムフィットスピーカー、「ISS 170」をフィーチャーする。石川県の実力ショップ、VIBESのご協力のもと、試聴取材を敢行した。
まずは、「ISS 170」の主要スペックからご紹介しよう。
ISS 170(税抜価格:3万8000円)170mm/2-WAY COMPONENT KIT
・再生周波数帯域:60Hz〜20kHz
・定格入力:60W
・インピーダンス:4Ω
・出力音圧レベル:91dB(2.83V/1m)
・クロスオーバー周波数:[ハイパス]4.3kHz
さて、この「ISS 170」。当製品のストロングポイントはどこかというと、ずばり、“コストパフォーマンス”である。ちなみに、当機よりワンランク上の製品といえば、フランス特産品である“亜麻”(Flax)を振動板素材に採用した“FLAX”シリーズの中のライトモデル、「PS 165F」がある。こちらの税抜価格が4万4000円。それとの価格差はわずか6000円。その差だけをみると、“コストパフォーマンス”と言われてもピンとこないかもしれない。しかし、取り付け性までを考えると、「ISS 170」は十二分なコストパフォーマンスを発揮する。
理由は以下だ。まずは、ミッドウーファーの取り付け奥行き寸法。「ISS 170」と「PS 165F」をテーブルに並べて比べてみたが、明らかに「ISS 170」のほうが奥行きが短い。さらに写真を見ていただければわかるとおり、バスケットの張り出し感も少ない。インナーバッフルで取り付けられる車種は多そうだ。
また、ミッドのローパスフィルターとツイーターのハイパスフィルターもコンパクト(インライン)なので、パッシブクロスオーバーネットワークの取り付け作業が不要だ。
そして何より、「ISS 170」にはトヨタ車用の取り付けスペーサーやハーネスも同梱されている。それらが活用できる車種であれば、インストール費用をさらに縮小できる。ツイーターに関しては、ダッシュにポンと置けるようにツイーターケースも同梱されている(これについては「PS 165F」についても同様)。
もちろん、ワンオフでインナーバッフルをこしらえたほうが音質的には有利だ。しかし「ISS 170」では、“費用を抑える”という選択肢も浮上してくるのである。
さて、問題は音質性能だ。「PS 165F」と比べて音質性能差が少ないのであれば、本当の意味で“コストパフォーマンスが高い”と言えるのだが…。
というわけで、ヴァイブスの試聴ボードに2モデルを取り付けていただき、シビアな比較試聴を行った。
ところで、「ISS 170」はルックスが良いと思うのだが、いかがだろうか。ツイーターグリルのデザインが渋く、フォーカルのロゴも映えている。そしてミッドウーファー。センターキャップではなく、フェイズプラグが装着されていて高級感がある。
まずは見た目においては十分に好印象だ。
で、音だ。
セレクターをこまめに切り換えながら2モデルを聴き比べた。その印象をヴァイブスの新谷店長にお訊きした。
「“FLAX”のほうが、かっちりした音ですね。低域の引き締まり方も“FLAX”のほうが上だと思います。それに対して「ISS 170」はしっとりとしていて、かつ艶やかですよね。『FOCAL』は女性ボーカルに向いている、というイメージを持っている方が多いと思うんですが、『ISS 170』の音のほうが、その流れを汲んでいると言えるかもしれません。音に関しての総合力では『PS 165F』のほうがやや勝っていますが、好みで言えば、『ISS 170』のほうが好き、という人もいるでしょう。それぞれに良さがあると思います」
記者も、新谷店長と同じ感想を持った。「PS 165F」は明るくシャキッとした音で、かつ低音のドライブ感も上々だ。価格から考えても高音質だと思う。しかし、「ISS 170」の耳あたりの良さも、これはこれで魅力的だ。
さらには、この取材に合わせてヴァイブスにやってきた、『FOCAL』の正規輸入代理店であるビーウィズのデモカー、トヨタ・エスクァイアも聴くことができたので、そのサウンドインプレッションもリポートしよう。
デモカーのシステムは以下のとおりだ。ヘッドユニットはアルパインの「ビッグX」。プロセッサーも「ビッグX」に内蔵のものを使っている。音調整は「ビッグX」にデフォルトで設定されている車種専用チューニングのまま、とのことだった。そしてスピーカーが「ISS 170」。サブウーファーは不使用だ。ちなみにドアのデッドニングもサービスホールを塞いだだけ、とのことだ。AV一体型ナビ+カスタムフィットスピーカー、というあくまでライトなエントリー仕様である。
改めてクルマで聴いて、印象は変わらず良好だった。これだけを聴いていて、低域に不満は感じない。十分にタイトでかつ躍動感がある。そして中・高域もすっきりしていてヌケもいい。ダッシュが深く、ツイーターを奥に置けていることが功を奏しているのだろう、ステージの立体感も申し分ない。3万8000円という価格から考えて、十二分な音質性能を有している。
さらに、このクルマには「STATE MM-1D」がサブヘッドとして搭載されていた(アナログ音声をナビヘッドのAUXに接続)。それに切り換えて聴いてみると…。
「STATE MM-1D」の情報量の多さ、S/Nの良さを、「ISS 170」はしっかりと描き切ってみせた。「ISS 170」の音質性能は確かだ。後々、外部アンプを加えるなどシステムアップをしていっても、ある程度までは十分に使っていけるだろう。
結論だ。「ISS 170」の“コストパフォーマンス”は高い。初めてのスピーカーとして、使って損のない製品だ。
またしても、“カスタムフィットモデル”シリーズ、そして『FOCAL』の懐を深さを、再認識させられた。
さて、次週はパワードサブウーファー「IBUS 20」のインプレッション・リポートをお贈りする。お楽しみに。
《text:太田祥三》