これから紹介するのは、なんとロシアのケーブルである。
ホーム・カーを問わず、これまでロシアのオーディオ製品が輸入されたことはおそらくない。そもそもロシアにそうしたメーカーがあること自体、全く知られていなかったといっていい。その点でまずこれは、とても新鮮である。
チェルノフ・ケーブルは1997年、モスクワに設立された。主宰者はピーター・チェルノフ・シニアという人物で、2002年から発売を開始している。もともとロシアはケーブル製造の歴史が古く、また旧ソ連時代には世界第2位の生産能力を持っていたそうだ。
現在チェルノフ・ケーブルの本社はドイツ・ベルリンに置かれているが、製造は伝統あるロシアの工場で行われている。ホーム/カーのオーディオ、ビデオ、プロ用など多岐にわたる製品ラインアップを持つという。
チェルノフ・ケーブルのポリシーは正確なレスポンスのバランスとタイミング、自然な音色という点にあるが、それを実現するためのアプローチはユニークだ。
まず導体は銅線だが、単に高純度化を求めるのではなく、ある程度の不純物を残した方がバランスがいいという事実に基づいている。ただし単に純度が低いということではなく、精錬から導体製造のあらゆる行程で厳密に管理され、最適な成分比率となるよう特殊な製造方法が採られているようだ。こうして作られた導体をBRC(バランスト・リファインメント・コンダクター)と呼んでいる。
絶縁体もテフロンやポリエチレンなどの発泡素材や、ダンピング特性の高いエラストランという素材を各種使い分けている。これらは絶縁性能に優れているだけでなく、物理的振動や静電気などによるノイズを排除するために、適切なパートに使用される。またハンダは日本で特に開発されたものだという。
構造面では表皮効果を抑えるために、基本的にマルチストランドの撚線構造を採用している。同時に製造時の精度を維持するため、全行程で厳重な検査もおこなわれているそうだ。実際カット・サンプルを見ても、断面の正確さや各部の均一性など、精度の高さが窺われる仕上がりになっている。
現在の取り扱いラインアップはCuprumというシリーズで、その中にジュニアとオリジナルというグレードがある。さらにスーパーハイエンドとしてリファレンスというグレードも扱われる。次回以降、順次RCAケーブルおよびスピーカー・ケーブルについて、試聴の結果をお伝えしたい。
《text:編集部》