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【プロショップ訪問記】Pro Shop vogue<ヴォーグ>(千葉県): クルマの中でもいい音が聴きたい!

カーオーディオショップ訪問記

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さて、今回取材でお邪魔したのは千葉県千葉市にあるカーオーディオ専門店「vogue(ヴォーグ)」です。到着してまず驚いたのは、その外観。まるでインテリアショップのショールームみたい。おまけに店内には赤い色のらせん階段も見受けられます。

やまさきえみさんの心がやまさきえみさんに囁きます

嘘? イ、イメージと全然違う!!

実は私、今回のオファーがあった時「スミマセン。ド素人の上に、専門店なんて恐れ多くて。それに、いつも工事の音とかしていて、ガソリン臭いとか...」などと、良い歳こいて駄々をこねたんですね。私だけではないと思いますが、女性にとってクルマ業界というのは少々敷居が高いもんなんです。ましてやカーオーディオ専門店なんて、って。

ところが、こちら「vogue」は、私のつまらない心配を吹っ飛ばすかのような、とってもキレイなお店でだったので、思わずビックリしたというわけなのです。



インテリアショップのショールームのような店内、美しいデモカー…これが専門店!?



笑顔で迎えてくださった、vogueショップマネージャーの渡邊達也さん

店内に恐る恐る足を踏み入れたところ、笑顔で迎えてくださったのは、ショップマネージャーの渡邊達也さん。カーオーディオのことならなんでもお任せ! という優しくも心強いスタッフとの出会いに早くも安堵しつつ、最近の私の悩み事を相談することにしました。

ナビなんかについているCDプレーヤーや、ポータブルオーディオの代名詞ともいえるiPod(今回取材に持ち込んだのはiPodminiなんですケド)。クルマの中で聴いてみたら、なんとなく違和感みたいなものを感じるような、でもそれって気のせい? 皆さんもそんなご経験ありませんか?

このことを私同様、iPod愛用者の友人に質問したところ「CDはともかく、iPodの場合、無線で飛ばしてFMチューナー経由で聴いているからなんじゃないの? もしくはiPodのデータが壊れてるんじゃない?」との回答が返ってきました。なんて無責任な!! だって、イヤホンで聴いている分には何の問題もないのになぁ…。読者の皆様方には笑われそうですが、(これって私だけ?)超ビギナーというのは、こういうやり取りを少なからずしてるんです。

そこで、ここはやはり専門家に依頼して、なんとかクルマの中でも楽しく音楽に浸れるような、そんな環境作りをお願いしようというのが、今回「vogue」を訪れた目的です。

渡邊さんによると、前述の友人の言ったとおり、無線で音楽信号を飛ばすというのは簡単、かつ便利ではあるものの、ヘッドユニット(つまりプレーヤー)とiPod専用アダプターCD-IB10を直接接続して聴くのが良いそうです。これは電話に置き換えてみると簡単。ワイヤードとコードレスフォンなら、ワイヤードの方が音が良いというのと同じですよね。加えて、本体の操作もすべてユニット側で行なえるため、手探りでiPodの操作をしなくてもOK。「そっか、これをまずは買えば良いんだ」と納得する次第。しかし! これで音の問題は解決なのね、と浮かれるのはまだ早かった。

渡邊さんは、お店に相談に来られる方には、そういった細かなアクセサリーキットも大切だが、最初はスピーカーを取り替えることをお勧めしているという。それから、アンプ、ユニットとステップアップを…

ここでやまさきえみさんのフトコロ具合がやまさきえみさんに囁きます

ただでさえ先立つものがないんだから、納得ばっかりしてて大丈夫ですかー?

超ビギナーの私。いきなり総取替えとなると予算も相当かかるのでは? という不安が頭をよぎります。



にこやかな表情で「お任せください!」と応えてくれた渡邊さん

「あのぉ、もちろん音は良くしたいし、快適なカーオーディオ環境を作りたいという希望はあるのですが、なにせ予算がないもので。なんとか(なけ無しの)30万円以内でお願いできませんでしょうか」と勇気を振り絞って切り出してみました。すると、渡邊さんはそのにこやかな表情のまま「大丈夫ですよ。うちのお客様には予算20~30万円の方も多くいらっしゃいますのでお任せください!」とのお答えが。内心「最初に予算を言うのって正解よね」と思いつつ、ちょっと安心したところで、なぜ最初にスピーカーなんだろう、という疑問が浮上してきたので、すかさず質問してみることにしました。

自宅で楽しむホームオーディオと違って、カーオーディオでは常に動いている状態で音を鳴らさなければならないため、まずはその振動を防がなければいけません(この作業をデットニングと言います)。スピーカーの原理は、アンプで増幅された音楽信号を振動板(お椀型の丸い部分)に伝えて、それを前後に動かすことにより空気を震わせ「音」を鳴らすという仕組み。だから、スピーカー本体が走っている最中でも動かないように、しっかりと車体に取り付けられていないといけないのです。(ちなみに、スピーカーを取り替えなくても、デットニングを行なうだけでも随分と音が違ってくるそうですよ!)

また、エンジンを始め、様々な機械が混在する車内でオーディオ信号を正確に伝えなければならないので、余計なノイズが入らないように設計されたものをチョイスしなければならないとのこと。そこで、スピーカーに続いて、ヘッドユニットも別に取り付けることになりました。ヘッドユニットというのは音の入り口だと考えてください。CDやiPodなどに入っている音楽信号を読み取る場所です。

最近ではナビ本体にプレーヤーやチューナーが付属しているタイプも多くありますが、やはり主役はナビなわけで、音楽を聴くには別にユニットを取り付けた方が“ベター”と渡邊さんは話してくれました。

でも、オーディオというのは悲しいかな、プレーヤーだけでは音は出ません。プレーヤーで読み取った信号を今度はアンプに送って、アンプがその音楽信号を増幅します。「アンプ=amplifier=増幅する」という意味なんです。こうして増幅された信号がケーブルを通ってスピーカーに送られて音が鳴る、というのが非常に簡単なオーディオの概要です。



直接解説をもらいながらカタログをじっくり読めるのもショップの魅力

ここまで読むと、なんだか面倒臭そうと思う方もいらっしゃるかもしれませんが大丈夫。アンプ内蔵の一体型ユニットという便利なモデルも数多くあります。これなら、スロットにCDを入れるだけでOK。チューナー内蔵タイプならラジオも聴けちゃいます。

私は「今どき何を?」と言われそうですが、FMエアチェック派のため、チューナー内蔵の一体型モデルを希望したところ、そんな私にぴったりのお手頃モデルがありました!

というわけで今回はここまで。なお、渡邊さんのチョイスは以下のとおり。


ヘッドユニット:
パイオニアDEH-PO99(アンプ+CDプレーヤー+チューナー一体型)

スピーカー:
BEWITH リファレンス

はじめはホームオーディオとカーオーディオの大きな違いに戸惑いつつも「vogue(ヴォーグ)」の渡邊さんの「まずは基本となるベースを作るところから始めましょう」という、なんとも優しいお言葉に励まされ、ホッと一息。そんな私のために渡邊さんがご提案下さったのは、ヘッドユニットとスピーカーの導入です。ヘッドユニットには「パイオニアcarrozzeria(カロッツェリア)」のラインナップの中からDEH-PO99(アンプ+CDプレーヤー+チューナー一体型)を、スピーカーには
「BEWITH(ビーウィズ)リファレンス」がいいのではないか、ということになりました。



アンプ+CDプレーヤー+チューナー一体型のヘッドユニット「carrozzeria DEH-PO99」

ここで「カロッツェリアはナビでも有名だから知ってるケド、BEWITHって何? 知らないよ」と思い、カタログを見るとホームオーディオ用スピーカーもあり、おまけにその値段にビックリ! なんと、ホーム用は1本105万円(税込み)!! それが「リファレンス」では134,400円です。ここでようやく気がついたバカな私。そうです。クルマに取り付けるスピーカーにはキャビネット(スピーカーユニットを取り付ける箱のこと)が要らないのです。ちなみに、ホーム用モデルH-1のキャビネットは総漆塗り仕上げ。そりゃ、値段も高くなるはずですよね。



なんと1本105万円の総漆塗り仕上げスピーカー「BEWITH H-1」

BEWITHはその名前からして海外メーカーかと思いきや、佐賀県にある会社で、もともとはカー用のケーブル類などの輸入が本業だったそうですが、自分たちで理想の製品群を作りたいという熱き想いを持ったスタッフたちにより、実際に製品を作ってカーオーディオ業界に新規参入したというメーカーだそうです。で、市場に売り出してみたところ、その製品が高く評価され、これまでに数々の賞を受賞し、今ではその地位を確固たるものにしているとのこと。日本の企業も捨てたもんじゃありませんネ。なんとなく嬉しくなってしまうのは私だけでしょうか?



こちらがクルマ用のリファレンスセット

渡邊さんイチオシのこのリファレンスは、同社スピーカー最上位モデルである「Confidence(コンフィデンス)」の技術を継承しつつも、コストダウンを図った実力派だそうです。これはオーディオに限ったことではありませんが、第1作目には開発までに膨大な時間と費用がかかるため、その価格も当然高くなってしまいがち。でも、一度その技術ができあがってしまえば、アレンジはいかようにもできてしまうので、自然とコストダウンも可能となります。今流行りのプラズマテレビや液晶テレビの場合も同じで、最初出たときは「目が点」状態の値段で庶民の私には到底手が出ないような代物でしたが、今では技術も進歩し、画質も格段に良くなったにも関わらず、価格も1インチ1万円を切るのが当たり前となり身近な存在となっていますよね。

話が少しそれたので軌道修正しましょう。「vogue」の店内には実際に試聴できるように、店内にいくつかのスピーカーやアンプが展示されているのですが、眺めているうち、ふと「あること」に気がつきました。BEWITHのスピーカーはトゥイーターがドーム型ではなく「コーン型」なのです。

スピーカーは、音楽信号を空気の振動に変えて再生することは前回説明しました。それを踏まえた上で少し補足すると、スピーカーというのは、個々のスピーカーによって再生できる音の幅が限られているのです。簡単に言うとコーン(お椀の形をしている部分)の大きさが大きければ大きいほど低い音が再生でき、高い音はコーン型では通常のセオリーでいくと、ちょっと難しいので、ドーム型(クイズ番組なんかで見かける、盛り上がったボタンの形を想像してください)を用います。フルレンジといって、コーン型で全部の音を鳴らしきるというモデルもありますが、カー用スピーカーは、一般にスピーカーは低域~中域の音をコーン型が担当し(このスピーカーをウーファーと言ったり、ミッドレンジまたはスコーカーと言ったりします)、高域の音はドーム型(このスピーカーをトゥイーターと言います)が担当する、2ウェイ方式でいくのが普通なんです。

ところが、BEWITHはトゥイーターもウーファーもコーン型です。これってどうして? その答えはカタログに記載されているスペックにありました。

どこからどこまでをウーファーが担当し、どこからどこまでがトゥイーターが担当するかということは、各社各様に独自に設計し、ネットワークというシステムを組んでいます。このネットワークもスピーカーを構成する重要な一部であり、いわばスピーカーの頭脳と言ってもよいでしょう。トゥイーターとウーファーの音の境目のことを「クロスオーバー周波数」と呼ぶのですが、BEWITHではこのクロスオーバー周波数が800Hz(ヘルツ、音の高低を表す単位)に設定されています。一般的な2ウェイのスピーカーの場合、クロスオーバー周波数は3~4kHzに設定されている場合が多く、前述した通り、高い音になればなるほどコーン型では再生は難しいため、ドーム型トゥイーターを採用することになります。こう書くと「BEWITHは高い音の再生をあきらめている」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。800Hzという数値の裏には「なるほど!」と思わせる理由が隠されているのです。

ホームオーディオと違い、カーオーディオの場合、スピーカーとリスニング位置が非常に近いですよね。BEWITHの技術スタッフはそれを逆手にとって、トゥイーターをセオリー通りのドーム型ではなく、コーン型を選択しているのです。例えば、クロスオーバー周波数が3~4kHzだった場合、車内という限られた環境の中では、その音の境目が割と容易に聞き分けられてしまうのではないか。つまり「トゥイーターとウーファーが別々に鳴っているように聞こえてしまい、スムーズに音楽再生ができない」と考えた訳です。そこで、クロスオーバー周波数を800Hzという通常より約2オクターブ低い音域に持ってくることで、トゥイーターとウーファーの2個のスピーカーをできるだけ1個のスピーカーとして結びつけようという、かなり画期的な発想が盛り込まれているのです。そうしてこのようなコーン型×2の2ウェイシステムが完成されたのです。もちろん、一般的な2ウェイスピーカー方式がいけないということではなく、BEWITHのスタッフは、ヒトの耳が一番聞き慣れている中帯域の音の再生を重視するという点において、ひとつの結論を出したということなんですよ。

ここまでの渡邊さんの丁寧な解説により、さすがに「納得&感動」した私は、早く音が聴きたくてしょうがない状態に。というわけで、実際に音を聴かせてもらうことにしました。



いよいよvogue渡邊さんオススメのBEWITHの音を視聴 …ス、スゴイ!(つづきは次回)

壁面に取り付けられたBEWITHのスピーカーにケーブルをつなぎます。再生装置はあくまでも試聴用ということで、渡邊さんチョイスのモデルではなく、もっとハイエンドなものでしたが、実際に渡邊さんが音の調整用に使っているというCDを聴かせてもらうことができました。

「vogue(ヴォーグ)」の渡邊さんが普段テスト用に使っているというCDをヘッドユニットにIN。“ふわり”と言ったら良いでしょうか。「なんとなく優しい音だな」というのが私の最初の印象です。音そのものがナチュラルで聴きやすい。これなら長時間聴いていても疲れそうにありません。カーオーディオビギナーの私にも、ぴったり合うような予感が早くもしたのでした。

ただ、壁面に取り付けられているモデルで聴いた音が、果してそのままクルマの中でも聴けるのかしら? と生意気なことも思ってしまい…

と、そこですかさず渡邊さん。「デモカーへどうぞ」ですって!! それってもしかして入ってスグのところにあったフェアレディZ(ゼット)のこと?! Z、カッコ良いですよねぇ(しみじみ)。さすがにデモカーだけあってピッカピカに光り輝いております。早速乗り込むと、革張りのシートの座り心地の良さがなんとも言えずサイコー! それだけでなんだかゴージャスな気分になっちゃいます。ダメダメ、今日は取材でした。主役はZに取り付けられたカーオーディオですよね(ココでやっと我に返った私です。スミマセン)。



ピカピカのZの革張りのシートにうっとり…スピーカーの配置はご覧のとおり。

スピーカーはドアの内壁にウーファー、エアコンダクトの部分にトゥイーターが取り付けられていました。なんでも触ってみたい私。コーン部分を触ってみるとツルツルしています。これってナゼだか分かりますか?

最近のスピーカーのコーン素材には様々な素材(金属や、珍しいものだと薄く延ばした木など)が用いられていますが、元を正せばスピーカーを発明したエジソンが作ったコーン(スピーカーを発明したのは、かの発明王エジソンだってこと知ってました?)も「紙」でできていた訳で、今でもホーム用モデルで紙が使われているケースも多くあります。しかし、カーオーディオの場合、開け閉めするドアにスピーカーを取り付けるため、雨風にさらされるケースも多々ありますよね。なので、耐久性・耐水性の面から考えても、紙、つまりペーパーコーンは不利なのです。もちろん、ペーパーコーンに樹脂などでコーティングしているモデルもあったり、現在では各社いろいろと工夫を凝らしたタイプが発売されています。渡邊さんによれば、カー用にもっとも多いのは「PP(ポリプロピレン、つまりプラスチック樹脂のこと。なおBEWITHもこのタイプ)」だそうです。

また、店内にて展示されていた時には、トゥイーターがコーン型だということに目が行き、気がつかなかったのですが、よく見ると中心部分が外側に偏心(偏っている)していることにも気がつきました。これは、音の左右への広がり感を出すためなんですって。ホーム用でもこの手法が用いられることもありますが、ホーム用の場合は、ウーファーをトゥイーター側に近づける(上側に偏心させる)ように設計されているモデルが一時期話題になり、その評価は今でも高いのですが、外側に偏心させることはほとんどないと思います。

先ほど、BEWITHの音の印象を私は“ふわり”と表現しました。これはスピーカーの中心部分を左右に偏心させることで、より広く、包み込むように広げることに成功している結果だと言えるでしょう。



視聴ブースで聞いたBEWITHの“ふわり”は、車内でも見事に再現されていました!

前回から、スピーカーの話ばかりで、ヘッドユニットの話がちっとも出てこないじゃないか、とお怒りの声がそろそろ聞こえてきそうな予感が… お待たせして申し訳ありません。ここで、カーオーディオ環境とヘッドユニットの深い関わりについて説明したいと思います。

この連載の第1回目に話は戻ります。クルマの中で音を聴いていると、なんとなく「違和感」を感じて、一体それが何なのか。それを解決するために、ここ「vogue」にやって来たというのが今回の目的です。クルマの中、といっても運転席ですが、右側に座りますよね(左ハンドルはその逆)。でも、スピーカー本体は左右対称に取り付けられているため、運転席に座ると左右のスピーカーからと運転席までの距離が違います。ヒトの耳というのは、思っている以上に敏感で、この左右の距離の違いを容易に聞き分けてしまうのです。言い換えると、右側のスピーカーからの音が先に聞こえてしまい、左側のスピーカーの音は遅れて聞こえてしまうということ。参考までにご紹介すると、ホームオーディオでは「逆正三角形」が理想と言われています。つまり、スピーカーを左右に内側60度に向けて置き、下の三角の頂点(この場所をスイートスポットと言います)に座って聴くのが通常のセオリーなんです。しかし、クルマの中はこれとはまったく違っています。実はこれが私が感じた「違和感」の正体だという訳なのです。

この問題を解決するには、スピーカーをはじめ、道具を揃えるだけではダメ。ヘッドユニットを自在に操る、渡邊さんのような専門家の技術が必要になってくるのです。

ヘッドユニットには普通チューニング機能が備わっていますが、渡邊さんによると、実際には買ったときのママで、うまく活用できていないユーザーが多いそう。正直なところ、面倒だし、どうやっていいか分からないというのが多くの方の本音なのではないでしょうか。渡邊さんが私に選んでくれたエントリークラスのモデルにもちゃんとチューニング機能が装備されています。しかも、各社それぞれ擬似的にステレオ環境を構築する「オートチューニング機能」もあります。

例えば、パイオニアの場合「オートタイムアライメント+オートイコライザー」という、座席に小さなマイクロフォンを取り付けてスイッチを押すだけで、クルマごとに異なる特性を測定し、自動的に最適な状態へとチューニングしてくれるという便利な装置が付属しています。タイムアライメントというのは、前述した音が耳に到達する時間差のことです。これをイコライザー(この時間差を調整してくれる機能のこと)を使って、左右のバランスをとるという、超ハイテクな機能が備わっているのです。

この機能は簡単で、確かに有効ではありますが、現実問題として周囲に雑音があったりした場合、その雑音を拾ってしまい、必ずしもパーフェクトな状態になるとは限らない、というのがオート機能の落とし穴。というわけで、渡邊さんのような確かな耳と実績を持った専門家の技術が必要になってくるのです。



チューニングされたサウンドにびっくり! スイートスポットに座れない車内でも違和感を感じません!


そこで、まずは実際にチューニングされた音を聴いてみました。「違和感」なんてまるで感じさせない見事な鳴りっぷりに驚きました。左右に偏心したBEWITHのスピーカーの、包み込むようなサウンドも魅力だし、トゥイーターとウーファーの繋がりもスムーズ! カーオーディオ初体験の私にとって、革命的な一瞬でした。続いて「やっぱり検証しておかなきゃイカン」と思いつき、チューニング前の音も聴かせてもことにしました。

感想→「気持ち悪い」の一言に留めておきます。ガラスを爪で引っ掻いた時のような、背筋にゾゾゾと来る感じ。分かります?

渡邊さんは、チューニングする際にはピンクノイズ(“ザー”というテスト用によく使うノイズのこと)とテスト用CDを使って、自分の耳でひとつひとつ確かめながら、依頼者のクルマごとに慎重に作業を行なうそうです。実際に、ユニットのイコライザー画面を見せてもらうと、帯域ごとに音のレベルが実に細かく設定されていました。素人が下手に手を出す範疇ではないな、と直感する次第です。やっぱり専門家ってスゴイんだぁ、と感心するばかりナリ。

ちなみに、このデモカーにはサブウーファー(ヒトの耳に聞こえるか聞こえないか位の低い音を受け持つスピーカー。実際には音を聴くというよりも、重低音を体で感じるという使い方をすることが多い)も取り付けられていました。ダイナミックに音楽を楽しみたい方にはこういったオプションスピーカーを取り付けてみるのも面白そうですね。



デモカーのサウンド視聴で納得したあとは、いよいよ最終的なご相談を…

もっと音を聴いていたい、と後ろ髪引かれる思いでフェアレディZを降り、再びテーブルへ。最終的な相談に移ることにしました。

テーブル席に戻った私は、これまでにいろいろと教えていただいたことを、もう一度確認する意味でも「vogue(ヴォーグ)」の渡邊さんに、これからカーオーディオを始めたいと思っている方にとって、大切なことは何かを訊くことにしました。



「ベースが大切」と渡邊さん。ところで渡邊さんが取り出したものは…?(次ページにつづく)


「まずは何かを買い足す(買い替える)前に、デットニングやノイズ対策など、ベース部分をしっかりと作り、ヘッドユニットやスピーカーといったオーディオ製品の特性を十分に引き出せる環境を作ることがとても大切」とのこと。

「これもダメだった。あれもダメだった」みたいな「音探しジャーニー」は、何よりもったいないですもんネ! これは私の私見ですが、クルマ同様、オーディオ製品も長く愛着を持って使って欲しいと思っています。

それから、これは私も実際にデモカーで試聴してみて感じたことなのですが、クルマの中でも楽しく音楽が聴けるようになると、これまで聴かなかったようなジャンルの音楽も聴きたくなってくるから不思議です。「vogue」に相談しにいらっしゃる方も、最初は「ロック用にチューニングしてください」「ジャズ用に~」と指定される方であっても、いざ自分の求めるカーオーディオ環境ができてくると、もっと他の音楽も聴きたくなってくるのだそうです。これってとってもステキなことだと思いませんか? 

ただし、スピーカーに関して、ちょっと注意していただきたい点があるので、書き添えておくことにします。

スピーカーのコーンを支えているエッジ(コーンの外周のぽこっと盛り上がっている部分)ですが、これだけは消耗品だと考えた方が無難です。なぜなら、スピーカーはコーンを前後に動かすことで空気を振動させ、音を鳴らします。エッジというのは、コーンの動きをスムーズにするための、いわばクッションのような役割を担っているのですが、常に動くコーンを支えているうち、徐々に劣化してしまうのです。また、最初から付いているスピーカーのエッジ素材にはウレタンが使われている場合が多く、中でもウレタンは耐久性に関していえば、破れてしまう可能性が高いという現実問題があることも知っておいてください。これはカー用だけでなくホームオーディオにも言えることです。もし、アナタのスピーカーからボスボスという音が聞こえ出したら、エッジ部分をチェックしてみてください。悲しいことですが、タイヤと同様、エッジは擦り減ってしまうものなんです。

と、ここまでいろいろとカーオーディオについてのお話を伺ったり、実際に音を聴いてみたりしてきた私ですが、もう一歩ステップアップしたい人用に、アクセサリーの話も伺うことにしました。



なんと手作りのカバ材バッフルボードでした! vogueではオリジナル製作をお願いできるそうです!

アクセサリーはオーディオの楽しみのひとつ。例えば、ケーブルはその代表格とも言えるのではないでしょうか。

渡邊さんは、ケーブルについては個人の好みと予算によってかなり幅がある、と前置きした上で、オーディオテクニカのカタログを見せてくれました。走行中の振動を制御するタイプやノイズ対策に重点を置いたものなど、その用途も種類も様々です。メートル数百円のものから、数万円という高価なものまで本当にたくさんの種類があります。ヘッドユニットとアンプが別筐体になっている場合には結構な長さも必要になってくるので、どこにお金をかけるか、ということも十分に考えなくてはいけない点ではありますが、ケーブルを替えたら劇的に音も変化した! なんて話は、ホームオーディオでもよく聞きます(私もちょっと高いケーブルを無理して買った経験があったりして…!)。

それから、カーオーディオで忘れてはいけないもうひとつのアクセサリーが、バッフルボード(スピーカーを支える枠組みのこと)です。通常使われているのはプラスチック製のものがほとんどだそうですが、これを木製のものに替えるだけで、走行中であっても、スピーカーの対敵である不要な振動が制御でき、スピーカーの振動板が正確に動作するのにたいへんな効力を発揮するという優れモノなんですって。

そこで実際に木製のバッフルボードを見せてもらいました。ここ「vogue」では、車種ごとにオリジナルで作ってくれるそうです。渡邊さんは木工マイスターでもあるんですね! 

見せていただいたのは、カバ材を何枚も貼り合わせた合板のタイプと、MDF(木を一度粉にして固めたもの)の2種類。カバ材の方はひとつ約2万円~とちょっとお高いですが、MDFだと2000円位で作ってくれるそうです。これはちょっと試してみたくなる魅力的な値段だと思いませんか?

さて、全体が見えてきたところでいよいよ「お見積り」をしていただくことに…予算を超えないか、超ドキドキしながら待つこと数分。

そして、運命の時がやってきました。おそるおそる「見積書」を眺めると…



「ヘッドユニットは一体型でいいですね。あと、iPodも使いたいんでしたよね…」いよいよHow much!?



「締めてこちらのお見積もりになります」。ジャーン! これで私のクルマでも“あの”いい音が…

見積りの内訳は以下の通り











ヘッドユニット:パイオニア DEH-PO99\75,000-
スピーカー:BEWITH リファレンス(ペア)\128,000-
iPodアダプター:CO-IB10\10,000-
インナーバッフル(ペア)\10,000-
デットニング(両ドア)\50,000-
トゥイーターマウント(ペア)\35,000-
\308,000-
消費税(5%)\15,400-
総計\323,400-

というわけで、合計30万8,000円(税抜き)、32万3,400円(税込み)となりました。

当初の予算30万円を若干オーバーしたものの、デモカーにてそのサウンドに納得&感動していたので即決です。いかにその音に対してお金を払えるか、これはオーディオを選ぶ際の重要なポイント。

ここで渡邊さんがポツリと一言。

「見積りだけなら無料でやってますので」

そう、見積りだけならタダでやってくれるんです。そこの迷っているアナタ! そう、そこのアナタです。まずは第一歩を踏み出してみませんか? 

最後に、「vogue」を代表して、今回の取材にお付き合いくださった渡邊さんより、みなさんへメッセージをいただきました。



「簡単、便利になっていく世の中、オーディオももちろんその方向へ進んいると思います。でも、音楽はなくならないし、それを聴く楽しさもなくならないと思います。もっと良い音で聞きたいと純粋に思う、人間のアナログな部分も大事にしていただきたいですね。

またそれに、お答えできるように常に勉強をしていきますので、ぜひ一度お店にいらしてください」

というわけで、私のはじめてのカーオーディオ体験記は今回でおしまい。最後までお付き合いくださって本当にありがとうございました。私自身、最初はかなり緊張しましたが、カーオーディオという、新たなワールドへと足を踏み入れ、早くもハマりそうな予感がしています。

注:品名・価格は記事公開当時のものです

《text:編集部》

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